彦十蒔絵で職人をしています、明地紀苗と申します。蒔絵・塗り・事務作業を担当しています。
この道を志したのは大学時代の頃ですが、ゼミでは伝承文学を専攻し、卒業後から漆芸を学び始めました。京都で3年ほど勉強し、その後輪島にやってきました。彦十蒔絵の仕事は研修所在籍中のアルバイトから始まりました。それ以前から若宮さんのことは存じていましたが、日本文化や文学の世界を漆作品で表現されていると知り、すごい方が輪島におられるのだなと思っていました。そのため若宮さんと実際に出会えたことは私にとってありがたく幸運なことでした。そのご縁を繋いでくれ、先日の活動報告にも声を寄せておられた生田圭さんには感謝しています。
令和6年1月1日16時10分頃、私は帰省中の富山県で被災しました。
想像を絶する被害が起きてしまってから数日間は安否確認や情報収集をすることしかできませんでした。自分の所属する彦十蒔絵のメンバーの皆さんはじめ、能登にいる方々の無事を祈り、また輪島で共に漆に励んできた同年代の仲間とも連絡を取り、情報共有しながらしばらくは過ごしていました。当時は食欲も出てこなかったことを思い出します。
輪島にある大事なものや仕事場の状態などが気がかりでしたが、しばらくは輪島までの道路状況が悪く
自分一人の運転で向かうのは危険だと思い、他の方の車に同乗させていただいて震災後初めて輪島へ向かうことができたのは、発災から2週間近く経った1月13日のことでした。この日は変わり果てた街を見て、ただ呆然としていました。
私の借家は築年数が古いため地震に耐えられたかとても心配でしたが、現地に着くと、外壁などはかろうじて崩れ落ちずに保っていたものの、家の中に入ると柱は折れ曲がり、壁も斜めに傾き、危険な状態となっていました。なかには大事な仕事道具や材料などがあるので、それらをなんとか確保し、車に積み込み、金沢へ移動させるという作業を、すでに半年近く、1〜2週間に1回の間隔で行い続けています。
その大事なものを移動させた最初の場所は、金沢で借りられた一時的な仮住まいのためのアパートでした。震災後すぐに生田さんに相談し、しばらく二人で一緒に金沢で住みながら、今後の対応をしていくことになり、1月中旬には金沢での共同生活が始まりました。
また、1月下旬には彦十蒔絵の仮事務所が決まり、それから輪島の工房にあるものを移動させるために、何回も金沢・輪島間を往復しました。輪島の仕事場は建物自体は無事でしたが、中はひどい有様でした。
彦十蒔絵の事務所はその後4月下旬にあらためて今の場所に引越し、それに合わせて私もやっとつい最近、2度目の引っ越しを終えました。
大地震が起きた後、当事者は大きな不安や悲しみに耐えなければならず、被災状況も人によって差があり、理不尽に感じることもたくさんあります。現地で過酷な環境を強いられている人に想いを巡らすと、置かれた状況の中での自分の役割を考え、粛々と行動することが今の自分にできることだと思いながら今日まで過ごしてきました。
被災した輪島の職人さんの中には「これが辞め時かと思ったが次の世代のことも考えてもう少し続けようと思った」「こんなことで諦めてはいられない」という前向きな思いがある一方で、いろんな事情で漆業を断念せざるを得ない方もおられたり、また実際に自分の周りでも輪島で志高く励んでいた漆仲間が仕事場・住居共に全壊してしまい、地元に帰って今後のことを思案するという状況になった人もいます。
そのような、自分よりも被害を大きく受けた人の気持ちを考えると、継続して仕事を続けられるありがたさを実感するとともに、より真摯に仕事に取り組まなければならないという思いにもなりました。
彦十蒔絵の代表である若宮さんとマネージャーのワワさんは震災前からいつも、彦十蒔絵のメンバーである職人さんのことに気を配り、さまざまなサポートをしてくださっています。ほかにも、輪島で漆に励む若手や全国にいるまだ若い漆芸作家さんたちにも日頃から声をかけておられ、若い世代の職人たちをいつも気に掛け、尊重してくださっています。
お二人とも自分の利益よりも常に人のためにということを第一に考えておられるので、私たちは自然とその想いに応えたいという気持ちにもなります。震災直後真っ先に立ち上げられた「彦十蒔絵復興プロジェクト」もその一環に他ならないもので、自然と集まったご支援を、今後の活動に還元させるためにと声を上げてくださいました。
震災から半年が経ち、制作と事務仕事を並行して進められる環境が整ってきた今、ようやく私たちは彦十蒔絵にご支援くださった方やお世話になっている方への返礼品を準備しています。この段階にたどり着くまでにもとても時間がかかってしまいましたが、自分たちの生きがいを続けられることに感謝を込めて、お返しができたらと思っています。
最後に、今こうして私が彦十蒔絵の一員として金沢で活動再開することができているのも、まわりの皆様はじめ、まだお会いしたことがないたくさんの人の支えや想いがあってこそのことだと思っています。
この文章を読んでくださった方、私たちとこのプロジェクトに関心を寄せてくださる全ての方に御礼申し上げます。
金額3,000円 |
金額10,000円 | 在庫51 |
金額10,000円 |
金額30,000円 | 在庫43 |
金額30,000円 |
金額100,000円 |
金額300,000円 |
金額500,000円 |
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金額10,000円 | 在庫51 |
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