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2021年2月にミャンマーで起きた軍事クーデターと、その後の軍事政権による民主派への弾圧によりミャンマー国内は大きく混乱し、日本で学修する留学生にも大きな影響が出ています。留学生の中にはミャンマー政府の公務員として留学している学生も多く、京都大学、九州大学、立命館大学の在籍者について確認できる限りでも、所属する省や在日本ミャンマー大使館から軍事政権に対する賛同の意思表示を求められ、従わない場合には解雇や査証失効処置などがされております。 本国で所属している省や局によって状況は異なるようですが、たとえば森林局の公務員の場合、本国においても多数の職員が反軍事政権の立場に立っており、軍事政権側からの圧力はきわめて強くなっているようです。JICAの技術協力プロジェクトで京都大学や九州大学からもスタッフが派遣され能力強化に尽力してきたイエジン農業大学でも、多くの教職員が解雇されほとんど機能停止の状態に陥っているとの情報も入っております。このような反軍事政権の立場を表明して解雇された公務員の中には、指名手配されたために親類縁者を頼って地方へ移動し身を隠しているものも多いようです。また、現在日本に留学している学生で反軍事政権の立場に立つ学生も、帰国後に身柄を当局により拘束されることを危惧しています。一方、軍事政権に対する賛同を誓約した場合には、逆に民主派勢力から圧力を受ける例も見受けられるようです。
このような状況の中で、現在ミャンマー留学生を受け入れている大学教員は、各大学内ならびに大学間で、情報交換を行うとともにミャンマー学生のサポートについて大学の組織的な支援についての要望を行ってきました。これとは別に、留学生の多くが利用している奨学金を管轄する文部科学省、JICA、アジア開発銀行などの機関にも、働きかけをしております。幸い、アジア開発銀行の奨学生に対しては、帰国困難者への経済的支援も実施していただけることになりました。しかし、大学、文部科学省、JICAなどでは、今回のミャンマーのケースだけを特別扱いすることや、反軍事政権側に立つ学生への特別な支援の実施が、日本政府の政治的立場表明につながってしまうことから、具体的な支援策の実施には踏み出せない状況です。しかし、奨学金打ち切りの可能性のある留学生、今年9月に修了する留学生、半年後の2022年3月に修了予定の留学生などは、きわめて難しい局面に立たされており、早急の緊急避難的な支援が必要となりつつあります。このため、ミャンマーからの留学生を受け入れている教員有志で、皆様からの支援をお願いすることにしました。
留学生は次のような問題に直面しつつあり、それぞれについて支援策が必要だと、私たちは考えています。
(1)就学期間を終えて、博士号や修士号を取得した留学生のうち、本国での拘束の恐れがあり、帰国できない留学生が生じています。彼らについては博士課程の学生の場合には、ポスドク研究員として研究活動へ参加する、あるいは企業への就職の道を探ることが考えられます。修士課程の学生の場合には、博士課程に進学希望者も多く、奨学金をあらたに獲得して学修を継続することが考えられます。
(2)就学中の留学生の中には、本国からの仕送りが途絶える、あるいは奨学金の種類によっては公務員の職を解雇されたことにより、奨学金が打ち切られることが想定されます。この場合には、代替の奨学金を確保することや、研究室内でティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)、あるいはオフィスアシスタント(OA)として雇用し研究業務や教育業務をサポートしてもらいながら、就学を支援することが考えられます。
受け入れ教員としては、既存の奨学金枠や、各大学で運用されているTA、RA、OAの定員内で経費を獲得して、留学生支援を行う努力をしておりますが、いずれも用意されている資金には限りがあり、今回の事態に即応するのが難しいケースが多いのが実情です。ミャンマーにおける情勢不安を理由に日本への在留を希望するミャンマー人については、緊急避難措置として、在留や就労が認められていますが、英語での研究指導が行われる国際コースに在籍し修了後は帰国してミャンマーの発展に寄与することを考えていた留学生の多くは、現時点では日本語能力が十分ではないというハンディがあります。今回この要望書でお願いしたいのは、以下のようなミャンマー留学生の支援をお願いできないかということです。
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博士課程を修了した博士号取得者に向けたポスドク研究員枠を、産学連携で設置すること。
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就学中の学生を、RA、OAとして雇用する経費を研究室などに寄附していただくこと
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既存の、あるいは新規の奨学金や学習奨励金制度を利用して、奨学金打ち切りとなる留学生への経済的支援をしていただくこと
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修士課程、博士課程修了者の日本での就職活動や雇用機会について支援していただくこと
企業、財団の皆様がすでに実施されている既存の人材育成や、リクルート活動の中でご支援いただく、あるいは新たなプログラムを設置いただくなど、どのような形でも、彼らの支援につながります。具体的方策については、私たちがご相談に伺うことも可能です。今回、上記3大学の教員有志でこの文書を書いておりますが、実際には、これ以外の大学やそのほかの教育機関にもミャンマーからの留学生が学んでおりますので、特定の大学に限ることなく、支援が広がることを望んでおります。ただ、企業、財団によって、活動の地域が限られている、あるいは連携している大学が限られているなどのご事情もありますので、その点については、可能な範囲でご支援いただければと考えております。
ミャンマーの今回の事態が今後どのように推移していくかは予断を許さない状態で、留学生をめぐる問題も今後、長期化・複雑化する可能性も大きいと考えておりますが、まずは経済的、かつ身分的に非常に不安定な状態に陥る留学生を、緊急避難的な処置として早急に支援できることを心より望んでおります。皆様の暖かいご支援をこころよりお願いいたします。
ミャンマー留学生支援のための教員有志(京都大学・九州大学・立命館大学)
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活動内容
九州大学の教員有志を中心とする「軍事クーデターによって帰国困難となったミャンマー留学生支援のための有志の会(福岡)」では主に以下の2つの活動を行っています。
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日本での就職を希望するミャンマー留学生の支援
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これまで受給していた奨学金を打ち切られたミャンマー留学生に対する「留学生育英奨学金」の支給(福岡よかトピア国際交流財団の制度を活用)
活動実績
これまでに教員有志の寄付によって「軍事クーデターによって帰国困難となったミャンマー留学生支援のための有志の会留学生育英奨学金」を創設し、軍事クーデターによって帰国が困難なため、修業年限を超えて大学に在籍することが原因で、受給していた奨学金を2021年9月末で打ち切られたミャンマー留学生1名に対して6か月間(2021年10月~2022年3月)の「留学生育英奨学金」の給付を行ないます(現在選考中で11月に第1回目の奨学金を支給予定です)。
ご支援の使い道と目標金額
皆様からのご支援は、必要経費(ファンドレイジングのシステム利用料、決済手数料、トランザクション費)を除いて「軍事クーデターによって帰国困難となったミャンマー留学生支援のための有志の会留学生育英奨学金」(福岡よかトピア財団「留学生育英奨学金」)の原資として全額使用します。
福岡よかトピア財団の「留学生育英奨学金」の目安は、6か月間で25万円以上です。現時点で2022年3月末までに奨学金が打ち切られることが見込まれているミャンマー留学生4名(Zさん、Wさん、Yさん、Sさん)に対して、6か月間(2022年4月~9月)の「留学生育英奨学金」を支給するため、目標金額を100万円に設定しました(現時点で把握している4名以外で奨学金が打ち切られる見込みのミャンマー留学生が今後さらに判明した場合は目標金額を引き上げます)。
現在の目標金額
1,091,800円
(内訳)
・留学生育英奨学金の原資:1,000,000円(250,000円以上×4名)
・ファンドレイジングのシステム利用料(年払い):52,800円(4,000円×12か月×消費税10%)
・決済手数料(3.4%):34,000円(1,000,000円×3.4%)
・トランザクション費(1回の決済につき5円):5,000円(5円×1,000件)
選考委員会へのご参加
奨学金の申し込みから決定までの主な流れは以下のとおりです。ご寄付をいただいた方の中で、選考委員会へのご参加を希望される方は、第二次選考(面接)にオブザーバーとしてご参加いただけます(Zoom等を使用したオンラインでのご参加を考えております)。事前にご質問をいただければ、面接当日に選考委員が代わってミャンマー留学生へ質問します。
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第二次選考(面接)へオブザーバーとして参加を希望される方は、下記のGoogleフォームからご登録をお願いします。
・第二次選考(面接)へのオブザーバー参加希望(Googleフォーム)
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