活動・団体の紹介
岩手県大船渡市綾里(りょうり)地区に住む、阿部正幸と申します。出身は北海道。東日本大震災後の復興活動をきっかけに岩手県に移住し、2019年から大船渡市の漁村集落、綾里に住むようになりました。ここで、地域の水産品を販売するネットショップ運営や漁業体験プログラム運営などをしています。
綾里は三陸海岸のど真ん中に位置する人口2500人弱の集落。東日本大震災では最大遡上高40.1メートルという巨大津波に襲われましたが、家の高台移転や避難訓練など、過去の教訓を活かした対策をしていたため他地域に比べると少ない被害ですみました。
しかし2025年2月に発生した、大船渡山林火災で被害の中心地になり大きな被害を受けました。60軒を越える家が被災。今も多くの方が仮設住宅に住み再建途上にあります。

家屋の被害に加えて、漁業被害や山林被害も深刻です。山林の焼失面積は3370ヘクタール。地域の山林に入ると、根元が真っ黒に焼け、枝も立ち枯れしてしまった森が、どこまでも続く光景が広がります。漁業、山林中心に被害総額は100億円を超えています。

下記は、私が消防庁や行政の資料をもとに作成した火災範囲図です。集落をぐるりと囲むように山が燃えてしまったことがわかるかと思います。集落の家屋は、消防による懸命な消火活動によって相当、被害がくいとめられました。しかし山に関しては火を止める手立てもなく、火が燃え続けました。特に初日の延焼速度はすさまじく、たった2時間で600ヘクタールという集落全体を包むような火災に発展しました。

オレンジが火災から2時間で燃えた範囲、ピンクは1日目に燃えた範囲、黄色が延焼範囲全体。紫部分は、2月19日に発生した火災の範囲(2月に大船渡では2つの山火事が発生しました)資料の詳細はこちら
なぜ、これほど速く、巨大な火災が発生したのでしょうか。多くの研究者が指摘しているのが、
①長期間雨や雪が降らず落ち葉や枝がパサパサに乾燥していたこと
②当日強風が吹いていたこと
③落ち葉や枝が燃えやすい性質である、針葉樹が多かったこと
④リアス海岸特有の地形 の4点です。
特に大きな要因となったのが、①の極端な乾燥。パサパサに乾いた落ち葉や枝といった堆積物が、まるごと燃料になって燃えたのです。(詳しくは下記の報道映像をご覧ください)
私がなにより懸念しているのは、「極端な乾燥」は今後、発生頻度が増えると予測されていることです。その原因は気候変動です。これまで10年に一度のような乾燥が、3年に1度のような頻度になる。
大船渡の後も、愛媛県、岡山県、山梨県と各地で大きな山火事が発生するたび「どうすれば山火事を減らせるのだろうか…」と私は考えてきました。
活動の背景、社会課題について
上記の映像は、私が地域から避難する直前に撮影した火災の様子です。
私の自宅も、眼の前の山林まで火が迫り「風向き次第で、うちも燃える」と覚悟して避難しました。東日本大震災では、小さな火事がプロパンガスに引火して、連続引火が発生しました。そうなると集落全体が燃える、とそのとき私は考えました。幸いに懸命な消火活動で家屋の被害は食い止められましたが、あのときの恐怖感は住民全体が忘れられないものだと思います。

火災の鎮圧までかかった時間は13日間。その間、全住民が避難し家に帰れなくなりました。
避難先の大船渡市内から自宅の方を眺めると、燃え盛る山と煙が見えるだけ。東日本中の消防隊が大船渡に集結し、自衛隊も参加し国家の力を結集して消防活動が展開されているのに、火が一向に消える気配がない。幸いに3月5日に降った雨をきっかけに火災は鎮圧に向かいましたが、人間の力ではどうにもならない山火事の恐ろしさを痛感しました。そして、「こんな山火事が毎年おこれば国家としても大問題だ」と思いました。
しかし、その後も大規模山林火災は各地で発生しています。こうした山火事被害を少しでも減らしたい、というのが本プロジェクトの目的です。
日本の山火事は、出火原因の多くがたき火や火入れです。実際、ワラを燃やしたり、落ち葉を燃やしたり、そういった作業から大きな火事に発展するケースは非常に多いそうです。これまではそれが習慣だったとしても、気候変動によってリスクが増えており、極度な乾燥や強風など絶対に外で火を扱ってはならない日が増えていることを知ってほしいです。

このように山林火災の問題を書いてきましたが、当然ながら東日本大震災に代表される津波被害の伝承も忘れてはなりません。
私は三陸を訪れる、関東や中部から来る方に、いつも「津波が来て三陸は怖いと思うかも知れませんが、我々以上にリスクを抱えているのはあなた方です」と伝えています。なぜなら、南海トラフ巨大地震は、今後30年以内の発生確率が「80%程度」とされているからです。
「我々、三陸に生きる住民は、日頃から防災意識を持ち備えを怠っていません。ですけど皆さんは備えができていますか?備えがない皆さんの方がずっと危険だと私は思いますよ」と伝えています。
とはいえ震災から15年を迎え、多くの方の危機意識が風化してきていることを肌で感じます。特に20歳以下の方は3.11の記憶がありません。その世代への伝承が重要だと思います。現在、綾里地区には、津波についても、山林火災についても展示や説明の場所はほとんどありません。
度重なる津波と山林火災被害を経験した綾里地区にこそ、伝承施設があるべきだと私は考えています。
被害の中心地、綾里で伝承施設を開設したい
こうした問題意識を踏まえ、クラウドファンディングで実現したいのは、火災で最も被害を受けた大船渡市綾里地区に伝承施設を開設し、山林火災や津波の被害を伝え続けることです。
すでに施設は、所有者の方に了承を得て確保しました。クラファンではこの施設に展示する展示パネルや映像の制作費、備品、施設の維持費を捻出したいと思います。

施設は綾里地区の中心部にあり、多くの方が訪れやすい環境です。
私はこれまで、ボランティアで被害状況を伝える地図や、被災者へのインタビュー記事の制作など、自分なりのやり方で伝承活動をしてきました。ですが各地で頻発する火災報道を見る中「これは自分だけの活動で終わらせてはいけない」と思い、今回のプロジェクトを立ち上げました。
この計画は多くの研究者の方にも賛同をいただいており、展示資料の提供などすでに協力打診を頂戴しています。この伝承施設を拠点とし、被害を受けた林野を歩くスタディツアーなども今後開催したいと思います。

災害被害だけでなく、地域の魅力も伝えたい
火災後、私は被害を受けた漁業者の支援を目的として綾里ワカメ大作戦という活動を独自に実施してきました。この活動を通じて印象的だったのは、全国からボランティアが集ってくれたありがたさに加えて、浜で人々が働くときの生き生きとした表情でした。
私は綾里地区で様々な漁業体験プログラムを提供してきましたが、今回開設する拠点をベースに、改めてこういった活動を発展させたいと思います。

昨年の漁業体験・漁業支援活動でのワカメ収穫
その他、みちのく潮風トレイルのPR拠点としても、この施設を活用したいと思います。
陸前高田の「東日本大震災津波伝承館」が、多くの観光客の目的地となり、地震・津波の記憶・教訓伝承とともに地域産品の販売・PR拠点にもなってきたことをモデルとし、観光や地域PRの面でもこの施設を役立てたいと思います。
計画中の展示内容
計画中の展示内容は以下の通りです。
◯大船渡山林火災関連展示
・火災当日の状況を伝えるドキュメンタリー映像
・被害者や消防関係者へのインタビュー映像
・被害範囲のマップ
・焼損山林など、現地見学の案内
・山林火災の発生メカニズム、被害防止のためにできること
・火災被害からの復興状況
◯東日本大震災関連展示
・綾里地区での過去の津波被害(明治、昭和、チリ津波での被害)
・東日本大震災での被害状況、その後の復興について
◯地域の魅力紹介
・地域の漁業、水産物、海の豊かさについて
・「みちのく潮風トレイル」ルート紹介
映像・写真の提供へご協力をお願いします
こうした展示物作成にあたっては、火災当時の映像や写真の提供を多くの方に依頼したいと思います。京都大学防災研究所の峠嘉哉先生と、映像アーカイブの活動をこれまでもしてきましたが、改めて、地域の方からの提供をお願いしたいと思います。
加えてメディア、放送関係者の方からも、映像提供をいただけると幸いです。私が個人でおこなっている活動のため、時間も費用も素材も不足しています。ぜひご協力ください。(お問い合わせはこちらまで)
ライター(地域おこし協力隊)・学生インターンも募集します
こうした展示物作成にあたり、被災者や消防関係者への取材をおこなうライター募集も行います。ライターは、大船渡市地域おこし協力隊への就任という形での採用です。学生インターンは、3週間以上滞在できる方を対象にしています。詳細は下記をご覧ください。
寄付金の使い道について
下記の寄付金使途を予定しています。
クラウドファンディング目標金額・150万円
1. 展示用映像制作費 (動画6本程度) 30万円
2. 解説パネル取材制作・印刷費 20万円
3. 動画再生用ディスプレイその他備品購入、施設改装費 40万円
4. 施設賃料および水光熱費(1年間) 30万円
5. 施設スタッフ人件費(1年間) 20万円
6. クラウドファンディング手数料など諸経費 10万円
ネクストゴール・250万円
1. 2年目の施設賃料および水光熱費 30万円
2. 2年目の施設スタッフ人件費 20万円
3. 伝承施設のパンフレット&地図制作、webサイト制作 50万円
3年目以降の賃料および水光熱費については、入場料やカンパ、施設内での物販などでまかなっていきたいと考えています。長く運営できる体制を目指します。
代表者メッセージ
大船渡山林火災から1年。火災当時に感じたのは、「自分たち住民にとっておおごとだったけど、多くの人にとっては対岸の火事なんだ」ということです。岩手県の中でも他の町にいくと「大船渡でなにか火事がおこってるんだよね」というくらいの認識の方がいて愕然としました。その時、私たちたちは「集落ごと全滅するかも知れない」と気が気でない日々だったからです。
上記のように、これまでは稀だった山林火災は気候変動にともなって頻発する可能性があります。「どうすれば、山林火災を他人事ではなく自分ごと化してもらえるだろうか」と考えた末に企画したのがこのプロジェクトです。
これまで多くの方を被害現場にお連れしましたが、全員が一様に発する一言は「現地に来なければ全然、事態を理解できなかった」ということでした。
3370ヘクタールという面積があまりに巨大すぎて、実感をもてないのも一因でしょうし、山火事というのが身近に実例がないので、焼け跡を見ないと惨状がピンとこないのも一因でしょう。ネットやSNSで被害を伝えることは簡単ですが、現地に来て、始めて伝わるリアリティがあるという点を踏まえ伝承施設という手段を選びました。
特に田舎の方は、日常的に周りで野焼きやゴミ焼きをする方を目にすると思います。岩手県では本当によく見る光景です。私が伝えたいのは、「絶対に火を使ってはダメな日がある」こと。大船渡山林火災は激甚災害に指定されるほどの規模となりましたが、これだけ火災が急速かつ巨大に拡大したメカニズムをお伝えしたいです。
災害対策の基本は、メカニズムを知り、想像力を養うことだと思います。微力ながらその一助になればと思いプロジェクトを開始します。
ご協力、お願いいたします。
株式会社山海畑 阿部正幸
プロフィール
北海道札幌市出身。 2012年、東日本大震災の復興支援活動をきっかけに岩手に移住。2013年、日本初の食べ物つき情報紙「東北食べる通信」の創刊に参画、2021年から編集長。
2019年から大船渡市の漁村、綾里(りょうり)地区に居住。2024年に綾里で株式会社山海畑を創業。2025年2月の大船渡山林火災後、独自の避難施設や、漁業支援活動「ワカメ大作戦」を運営。

