山形国際ドキュメンタリー映画祭(ヤマガタ)との出会いは、大学生だった1990年代初頭、当時東京でヤマガタの作品を特集上映していた池袋のACT SEIGEIシアターでした。貧乏学生だったので山形まで行くのは無理だったのですが、私はまず池袋でヤマガタの多様な作品群に出会いました。その後、ミニシアター「BOX東中野」のスタッフになって今度は「ヤマガタ in 東京」を映写する側になりました。観る側だった頃には想像出来なかった、作品ごとに様々に違う上映フォーマット、映写室に溢れかえるプリントの山、そして連日連夜続く映写チェックとの格闘の日々でした。そして映画館を離れてフリーランスとなった1999年以降、ようやく映画祭本祭に通い始めることになります。
世界中から集まる作家たちはもちろん、私がいつも驚くのは日本中の映画関係者が、ドキュメンタリー映画の作家に限らず、まるで業界を挙げての社員旅行のようにヤマガタに集まり、連日連夜交流をし続ける様子です。もちろん業界人だけでなく、若手の作家や学生、そして映画好きの観客の皆さんもみんな一緒に、夜になると三々五々「香味庵」に集まって、誰が上とか下とか関係なくフラットな関係性の中で議論をする姿でした。正直なところ、ヤマガタでは作品を観ることよりも断然、この「自由な議論の場」としての映画祭の方が面白いと感じてきました。
そしてそのヤマガタの言論空間の大きな柱の1つが、今回出版が予定されているゲストへのインタビュー集です。私も前回の映画祭で初めてインタビューを担当しましたが、あらかじめ作品を何度も観て研究した後、通訳を介してじっくり対話ができる機会は私自身にとってとても貴重な体験でした。その一端はweb上で発表された採録(これもインタビュワー自身がみっちり編集します)を読んでもらえるとよく分かると思います。実はこのインタビューは映画祭開始当初から続いている伝統で、昔はマーク・ノーネスさんや佐藤真監督などもインタビュワーとして鋭い質問を重ねています。
一般にはなかなか興味を持ってもらえないとってもニッチな分野であるからこそ、このようなクラウドファンディングも有効に使うことで、ドキュメンタリー映画の制作者たちが今何を思い、感じ、悩みながら作品を作り続けているのか、しっかりと記録に残していくことがとてもとても重要なことだと思います。このような地道な活動に、私達作り手は日々支えられ、映画作りを続けることが出来ています。そして観客のみなさんも、きっとこの本を通して、映画をより身近に、そして深く複雑なものとして受け取ってもらえるのではないかと思います。これからの映画をめぐる言論空間の要として、このプロジェクトはとても重要だと思います。ぜひ一緒にこのクラウドファンディングを成功させましょう。
映画編集者/プロデューサー
京都芸術大学映画学科教員
秦 岳志
※ 昨年秦岳志さんにご協力いただいたインタビュー記事はこちらでお読みいただけます。
『ルオルオの青春』 洛洛(ルオルオ) 監督インタビュー 聞き手:秦岳志
https://www.yidff.jp/interview...


金額5,000円 |

金額20,000円 | 在庫23 |

金額35,000円 | 在庫28 |

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