阿武隈山地に位置する地域には、人が作業しやすいなだらかな地形に広葉樹を中心とした山が広がっています。山の利用は、炭焼きからシイタケ原木へと大きく変わりましたが、変わらずに人々の暮らしを支えてきました。
一帯は、東京電力福島第一原子力発電所事故の放射能汚染により深刻な被害を受けました。私たちは、当たり前のように接していた、山の恵みのありがたさや山に支えられた暮らしの豊かさを、失うことによって改めて気がつきました。
先人が、時代の荒波を越えて山を代々守り伝えてきたように、私たちは、放射能汚染がもたらした被害に向き合いながら、豊かな山の資源を今から150年先の世代にまで手渡せるように、山の暮らしを紡いでいくことを目標にしています。
私たちは、山の暮らしをとりもどすために、「阿武隈150年の山」構想を掲げています。150年には、2つの意味が込められています。
(1)30年を半減期とする放射性セシウム137が数パーセントに減る150年先に、阿武隈地域で、山とともにある豊かな暮らしを紡いでいたいという願い。
(2)明治維新から150年を迎えた今、これまでの開発を優先した日本の地域づくりの考え方を見直し、それに頼らない新たな山の暮らしをつくり直したいという想い。
私たちは、「阿武隈150年の山」構想を実現し持続可能な地域づくりを目指すために、地域の信頼のもと住民を中心に地域の多様な主体が協働する拠点として、非営利で公益的な視点を大切に活動するあぶくま山の暮らし研究所(Abukuma Sustainable Life Institute)を設立します。