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BankARTに行けばニュースに会える
放送局に勤めていたわたしにとってBankARTはネタの宝庫。展覧会、企画、スクール、パブ、書籍などに繰り出される企画には「新規性」「アート文脈」「地域と都市」「長期視点」「国際性」「空間利活用」が溢れていて取材のタネだらけです。そこで知ったこと、出会った人々が、私にさまざまなことを教えてくれ、蓄積されその後の取材に発展しました。
ネタがあるだけではありません。
2009年の「集まれアートイニシアティブ」会議で100人を超える参加者と深夜まで語り合ったこと、「これからどうなるヨコハマ研究会」で定期的に議論を交わし、その後私が参加していた「水辺班」が「水辺荘」に発展したことなどから、「ニュースが生まれる前の混沌」があるというのがBankARTの特異性だと思っています。
「村だから、結婚式がやれるといいと思ってたんだ」
という池田さんの一声で、ヨコハマトリエンナーレ期間中の新・港村のアートイベントとして私たちの結婚パーティを行うことになりました。
東北で震災があった夏、2011年8月から11月に期間限定で設けられた外部の電力をなるべく使わない「クリエイターのむら」。新・港村に入居する美容室や縫製工場、ギャラリー、カフェ、デザインセンター、メディアセンターの皆さんに関わってもらい、宇徳ビルヨンカイや象の鼻テラスで企画会議を重ねながら、むらの日常風景として私的な結婚式を公開で行う「OPEN WEDDING!!」という取り組みになりました。
それは、公共(パブリック)と私(プライベート)をどう共存させるのかの実験でもありました。
BankARTが手掛ける拠点は期間限定であるところが多く、思い出の結婚式をあげた「新・港村」も今は建物が壊され、蜃気楼のように消えました。
それでも私の人生にはどうしようもなくBankARTが刻まれており、これからも共にあると信じています。
船本由佳
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