
尊い命と故郷の景色を奪った大津波
2010年12月に離婚し、それから3ヶ月経った2011年3月11日。
今を生きるわたしたちにとって、一生忘れらない日。
あんな絶望を知った日は、ほかにない。
目の前で流される車や人、家、船。
黒い波が襲い掛かった。
見慣れた街並みはそこにはなく、ただただ響くのは地響きと悲鳴。
見たこともない土煙のようなもの、
見たこともない高さまであがる打ち付けられた波。
木に突き刺さり、ピクリとも動かない誰かの家族。
火災に飲まれた誰かの家族。
つぶれた屋根の下で冷たくなった誰かの家族。
思い出すのは最期の笑顔
あの頃、「家電エコポイント」ってのがあったこと、覚えていますか?
ちょうどアナログ放送から地デジへと切り替わる頃。
グリーン家電なるエコな商品を購入するとポイントが付与され、
ポイントを商品券などに交換できるという制度。
当時、冷凍空調設備会社で働いていたわたしは、
大槌町でお菓子屋さんを営む高齢の男性の来所を対応していた。
ニコニコのやさしいじいちゃんだった。
なかなかエコポイントの制度は難しく、
「そちらで購入した冷蔵庫のエコポイントの申請に行ってもいいですか?」と来所されたのだ。
一通り申請を済ませると、お茶を飲みながら世間話をした。
エコポイントは旅行券に換えるという。
「長年、ばあさんをどこにも連れて行ってないから」と、じいちゃんは嬉しそうにお茶をすする。
こんな素敵なご夫婦になる予定だったわたし。
何十年もの年を重ね、お互いが隣にいることが当たり前の夫婦に。
しかし、わたしの夢は、3ヶ月前に破れたのだ。
時計を見ると、もうこんな時間。
市役所にいく約束の時間だ。
わたしはじいちゃんに、今から市役所に行く用事があること、
手続きは滞りなく済んだので、のちほどエコポイント側から封書が届くことを伝えた。
「次は、ばあちゃん連れて、またお茶っこでも飲みにきてね!」と笑顔で見送った。
これが最期になるとも思わずに。
次に再会したのは死亡欄
すぐお店に電話をした。電話は不通で、ネットは遮断され情報を探せない。
何日も何日も何日も何日も。
そして見つけた、じいちゃんの訃報。
あとから知ったが、
自宅兼店舗に戻る途中で地震が発災し、まっすぐばあちゃんのいる店舗に帰ったらしい。ばあちゃんはすでに避難されており無事だったが、ばあちゃんを探しているときに津波で被災されたとのことだった。
あのとき、帰さなきゃよかった。
それが14年経つ今でも悔やまれる。
そして何より自己嫌悪なのが、ばあちゃんのところに行って、詫びる勇気が自分にないままだったこと。
7つのコーヒーカップ
震災の3日後には、いつも通りに出勤した。
朝礼のとき、社長や主任や職人のみなさん、みんなで泣いた。
なにも言わずに、ただただぽろぽろ泣いた。
いつものようにみんなのそれぞれの好みのコーヒーを淹れながら、わたしもぽろぽろ泣いた。
ある人は壊滅的なふるさとを想って。
あの人は安否不明の家族や友人を想って。
ある人はお客様を想って。
そしてわたしは、全部で7つのコーヒーカップに、
それぞれの好みのコーヒーを淹れられる幸福を想って。
災害は弱者に「君は弱者です」とレッテルを貼りにくる
しばらく忙しい日々が続いた。
お客様の復旧・復興のために泥かきの日々。
お客様の店舗で見つけた缶詰は、きれいに洗って避難所にお届けした。
腱鞘炎になるほどの、おにぎりを避難所で作った。
だれかの命になりますようにと、願いを込めて作った。
でもどこか、違和感を感じていた。
スーパーには食品もないし、買い物に行くガソリンもない。
暖をとる灯油も手に入らない。
幸い自宅は無事だったが、母子家庭になりたての我が家には食品のストックもなかった。
「弱者は弱者」であることをより実感したのだ。
その苦しさから、
「あいつ(元夫)は生きているのだろうか?」といつも考えていた。
海沿いの工事現場で勤務していたのを知っていたからだ。
あいつが生きていれば、養育費が継続してもらえる。
でもあいつが死んでいても、息子たちに遺族年金が入る。
もし生きていたとしたら、どさくさに紛れて海につきおとしても誰も気づかないのではないか。
そんなふうに、生きられた人々の復興とともに歩みながらも、
元夫に対するそんな黒い感情は消えなかった。
生活が苦しいのは誰のせい?
元夫が無事だと知ったとき、正直がっかりしたのを覚えている。
生きてるなら「子どもたちは無事か?」くらい連絡よこせよ!くらいに思っていた。
いつも怒っていた。
震災復興の毎日のなか、必死さとは裏腹に生活は厳しいままだった。
ずっとずっと貧困だったし、どんなに仕事をがんばってみても変わらなかった。
貧乏なのは元夫のせい。
心が苦しいのはシングルマザーにしたヤツらのせい。
なにもできないのはシングルマザーのせい。
なにもできないのは子持ちだから。
生活苦しいのは時給650円しかない給料のせい。
そんなネガティブな言い訳ばかり並べて、「弱者のレッテル」に歯を食いしばってきたのだ。
違和感を感じながら。
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