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©Violet/CARE
国連人口基金(UNFPA)によると、トルコ・シリア地震の被災者の中には、性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)のための医療や支援を緊急に必要としている約356,000人の妊婦がいて、そのうち約38,800人が今後1カ月以内に出産する予定です。彼女たちの多くは、愛する人、家、財産を失い、安全な住処や食料、清潔な水の確保に苦労しています。
シリア北西部、アレッポ県アザズ市にある「アル・アマル病院」は、建物の家賃、医療機器や医薬品の費用、スタッフの給与など、すべての費用と運営費をCAREが負担し、パートナー団体である「Violet」によって運営されています。2023年2月だけでも、同病院は外来・入院部門を通じて3,299人の女性や子どもたちに母子保健サービスを提供しました。
■□■婦人科医、Dima Um Nour博士からのメッセージ■□■
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©Violet/CARE
毎日、65~75人の女性を診察しています。私たちがここで受け入れている女性や子ども、新生児のほとんどは、紛争や最近の地震によって、何度も家や安定した生活を失っている人々です。彼女たちは、その場しのぎのキャンプ、放棄された工場や農場、あるいは混雑した家屋で生活していることがあります。宿泊施設でさえ、清潔な水や衛生設備、衛生用品を利用できず、4、5人の家族と一緒に窮屈に暮らしているため、家に住んでいてもキャンプのテントに住んでいるのと変わらないことがあります。
実際、どこに住んでいても、シリア北西部のほとんどの人にとって、清潔な水や、石鹸や生理用品などの衛生用品を利用することは贅沢なことなのです。このような厳しい状況を考えると、特に地震が発生した後は、誰もがコレラなどの感染症の蔓延を心配するのも無理はないでしょう。これは、妊婦さんにとって生命を脅かすほどの影響を与える可能性があります。
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©Violet/CARE
シリア北西部の全体的な状況は、地震が発生する以前から誰にとっても困難なものでしたが、今、皆の生活はまさに悪夢と化しています。紛争から逃れ、何とか家を見つけた人たちが、再び野外やテントでの生活を余儀なくされ、嵐のような異常気象にさらされ、食料や水などの基本的な日用品や物資が不足しています。私が地震後に医師として目撃していることは、これまで見たことのないものです。
震災前、アル・アマル病院では、週に2件の流産が発生していました。それが今では、1日に4件も流産しています。その中には、妊娠7カ月以降の流産である晩期流産もあります。三つ子を妊娠していた女性が、3人とも亡くなってしまったケースもありました。
また、死産が壊滅的に増えており、これまでの3倍以上の死産を目の当たりにしています。また、早産も非常に多く、震災前と比較して10~12%増加しています。つまり、現在アルアマル病院では、10人中3人が未熟児出産ということになります。
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©Violet/CARE
現在、当院に入院している女性のほとんどが、精神的な治療や心理社会的なサポートを必要としています。ストレスや不安から月経周期の乱れや不眠、睡眠障害、皮膚病の再燃など、一般的な精神・身体症状を呈する患者さんもいますが、非常に深刻な精神状態に陥っている方もいます。また、自殺願望があると話している妊婦さんのケースもあります。地震に加え、不衛生な生活環境、衛生環境の悪化、安全な飲料水や食料の入手がほとんどできないなど、北西部地域では精神面を含め、住民の健康状態がさらに悪化しているのです。
しかし、私は常に物事の明るい面を見ようとしています。私たちがお預かりする赤ちゃん、そして出産が成功するたびに、希望の光が見えてくるのです。私たちは仕事を続け、人々に希望を与える必要があります。もし世界に私の声が届くなら、シリアの人々に薬や医療機器、家や生活を再建するための道具の支援を続けるとともに、教育への投資や子どもたちを支援することを強く求めます。彼らは私たちの未来なのですから。