ボルネオ島ではレスキューされる動物が増えている
世界有数の美しい熱帯林が広がり「生物多様性の宝庫」であるボルネオ島。東南アジアの限られた地域にしか生息していないオランウータン、テナガザル、サイチョウ、マレーグマなどはボルネオ島の生態系をつくる貴重な野生動物たちです。
その中でも私たちの現地パートナーNGOのConservation Action Network(CAN)が活動するインドネシア東カリマンタン州では、豊かな森林地帯で今まさに大規模な開発が広がっており、野生動物のレスキュー依頼が増えていると言います。これらの動物は、住処である森を失ったあげく人間に襲われたり罠をかけられたりして怪我をしたり、親を殺された子どもが違法にペットとして飼われる事例も多くあります。
CANがレスキューする野生動物の一部は、健康で新しい住処(森)が見つかればすぐに移送する措置を取ることができますが、怪我や病気を患っていたり、まだ幼い動物であればレスキューセンターで長期的なケアが必要になります。(※ロンサム野生動物レスキューセンターについての詳細は過去のクラファンページからご覧いただけます。)
治療が必要な動物たちの中には、緊急を要するケースもありますし、過去には残念ながら治療中に命を落とした動物たちもいます。
人間の手によって傷つき、手術を必要とする動物たち
この写真の手術を受けているマレーグマの赤ちゃんは、レスキューセンターで保護された際にすでに不健康な状態でした。
体は痩せ細っていて、マレーグマの特徴である長い爪は成長に異常をきたし肉球に食い込んでいたので短く切る処置をする必要がありました。また、爪の食い込んだ部分が感染しウジ虫が湧いてきたため、数十ものウジ虫を取り除く手術も受けました。
術後の体は順調に回復している一方で、精神的トラウマも受けているようで、極端に怖がったりケージの隅っこから動こうとしない状態が続いています。
このマレーグマがどのような経緯で心身ともに傷を負ってしまったのかは不明確です。
野生動物がレスキューされる背景には、人間による違法行為(違法にペットとして飼い十分な世話をしなかったり、出会った動物にエアガンで攻撃をしたりなど)がありますが、そういった行為をしたと名乗り出る人はまずいないので、誰がどんな行為を働き動物たちが傷ついたかを把握することは困難です。
適切な医療を提供できるクリニックを建設したい
怪我や病気を患っている動物たちが生き延び、元気に野生復帰していくためには、適切な設備のもとでの治療が必要になります。
ロンサム野生動物レスキューセンターは、町から車で2時間、その後ボートと徒歩で1時間弱かかる場所にあります。この立地は、健康な動物たちにとっては森の中で人間の影響が少ない静かな環境で落ち着いて過ごせることを意味しますが、緊急治療が必要なケースでは移動時間がかかりすぎるという点でデメリットがあります。
また、山奥では電力の供給も安定しません。
先述のマレーグマの赤ちゃんのように手術を行う際には最低限の条件として十分なライトが必要ですが、それすらソーラーパネルの発電量に左右されてしまいます。今回は日中にヘッドライトを複数使って手術を行い成功しましたが、夜に緊急手術が必要な場合には不安が残ります。
電力はまた、レントゲンや血液検査機器などの医療機器を動かすためにも必要ですが、現在の設備では必要とされる電力を賄えません。
そこで、山奥のセンターとは別に、よりアクセスが良く電気も安定しているムラサ村の中に診療所を建設することにしました。(理想的には診療所は村ではなく街中に建設したいのですが、土地の取得などにお金がかかるので、より早く実現するために村の中に建設します。)
ご寄付の使い道について
診療所の中にはきちんとした手術台や薬品等の保管棚を設置する他、レントゲン室も設けます。
最終的にはレントゲン装置や血液検査機器など高額な医療機器を含む様々な医療機器を揃えていく必要がありますが、今回のクラウドファンディングではまず診療所に最低限の設備を整え運営が開始できるように下記の費用を募っています。
【プロジェクト費】
診療所の建設費:約69万円 ※送金時のレートによる
(内訳)
医療機器の作業代と薬品等の保管棚設置 約24万円
レントゲン室のコンクリート壁工事 17万円
電気工事 14万円
建物のペンキ塗り 7.5万円
ドアと窓の設置 6.5万円
★ネクストゴール★
医療機器の購入費:約110万円 ※送金時のレートによる
(手術等に必要な医療機器・設備60アイテム以上
レントゲンや血液検査器は別途調達予定のため除く)
【管理費】約26万円
(内訳)
両替手数料:約14,000円(海外送金時の費用)
カード決済に伴う費用:約66,000円(決済手数料、トランザクション費、振込手数料)
企画運営人件費:180,000円前後(集まった金額の10%以内)
合計205万円
※目標額に達さなかった場合でも、集まった金額をパートナー団体のCANに送金し、残りを別途調達しながら診療所の運営開始を目指します。
(医療機器の作業代と薬品等の保管棚のイメージ)
(レントゲン室のイメージ)
パーム油や石炭を生産するために熱帯林が減少している
野生動物のレスキューが必要となる原因は、人間が開発のために森を皆伐して動物たちの住処を壊しているからです。CANが活動するインドネシア東カリマンタン州では、広大な熱帯林がパーム油を作るためのアブラヤシのプランテーション(大規模農園)や石炭の採掘地へと変わっています。
写真のように森林が切り開かれた土地では、もはや野生動物が生きることはできません。野生動物は、餌や交配のために、もっと広い森林が必要となるのです。野生動物が餌を求めて村の農地や民家へ入ってきて、人と衝突する例も後を立ちません。
このオランウータンの親子は、東カリマンタン州のアブラヤシ・プランテーションと石炭の開発が半分進んだ土地で見つかりました。すでに5頭をレスキューしてケージが足らず、この時に親子を救うのは困難な状況でした。後に戻ってきた時には姿が見当たらなかったそうです。
このような水も餌も無い場所で、明らかに飢餓状態にあったこの親子は、残念ながら死んでしまった可能性が高いと言えます。あと半分開発が行われた時に何が起こるのかを想像すると恐ろしいことです。ボルネオ島ではこのような場所が今もなお拡大しています。
CAN代表リヌスさんの想い
リヌスさんは、先住民イバンの出身で、CANを立ち上げる前にはオランウータンの保護を行ういくつかのNGOで働いてきました。たくさんの野生動物をレスキューする中で、オランウータン以外の野生動物も保護する必要性を痛感したそうです。
しかし、ボルネオ島(インドネシア側)には、オランウータン以外の野生動物レスキューセンターはありません。リヌスさんはオランウータン以外の動物もレスキューしてケアする施設を設立することを決意しました。
リヌスさんはいろんなNGOに相談しましたが、誰もが口を揃えて、「オランウータン以外の動物には支援は集まらないだろうからやめておけ」とアドバイスされたそうです。リヌスさんはそれに対して、却って心に火が付き、なんとしてもレスキューセンターを成功させる決意をしました。
最後に〜日本の消費者と熱帯林保全をつなげたい!〜
私たちが救うことができなかったオランウータンの親子。
彼らが彷徨っていたアブラヤシ・プランテーションから作られるパーム油は、インスタント麺、スナック菓子、マーガリン、菓子パン(ショートニング)、アイスクリーム、チョコレート、洗剤、石鹸、化粧品など、植物油脂としてコンビニエンスストアやスーパーに溢れているものなのです。
日本に暮らす私たちも、消費者として、この問題にずっと目を向けていきたいと考えています。
本プロジェクトにご支援をいただければ大変幸いです。
また、ご関心のありそうな方へお伝えください。
消費者として、現地とつながっている私たち一人ひとりが問題を知り、何ができるかを考えることだけでもとても意味があります。どうぞよろしくお願いいたします!!