
わたしたち「特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」は、日本に暮らす移民・難民や外国ルーツを持つ人びとの権利と尊厳が保障され、差別を受けることなく、だれもが自分らしく安心して暮らせる社会を目指して活動しています。
移民・難民や外国ルーツを持つ人びとの権利と尊厳をまもるためには、法制度の整備が欠かせません。
そこで、草の根で活動する団体や個人が連携して、現場の具体的な問題・ニーズを集約し、それを国や社会に届けて法制度や政策の改善を実現するための働きかけを、全国レベルで展開しています。
また、海外のNGOとも協力することで、国境を超えた視点での移民の権利向上にも努めています。
移住連は、誰もが安心して自分らしく生きられると同時に、多様性を豊かさととらえる社会を、あなたとともに実現したいと願っています。

【1980年代〜】表面化した「新たな」隣人の困難に立ち向かう草の根の活動のはじまり
1980年代半ば以降、バブル経済による労働者不足を背景に、「ニューカマー」と呼ばれる外国人労働者が急増しました。在留資格のない外国人労働者の労働問題や医療問題、また外国人女性の人身売買の問題などが次々と表面化するなか、1980年代後半から日本各地で個人のボランティアや市民による草の根の外国人支援活動が生まれました。

1987年、各地の活動の情報共有やネットワーク形成のため、「アジア人労働者問題懇談会」が発足し、1991年には「関東外国人労働者フォーラム」が開催されました。そして1996年、全国ネットワークの結成が呼びかけられることとなる「移住労働者問題全国フォーラム」に発展します。
翌1997年にNPO法人移住連の前身となる任意団体の「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」が産声をあげました。

【2000年代〜】現場の声を変化につなげる:省庁交渉や国際的な働きかけによる制度改善への道のり
発足当初の移住連は、全国各地で活動する草の根の民間支援団体や労働組合、宗教団体や支援者個人をつなぐネットワーク団体として活動をスタート。
メーリングストや活動情報誌Migrant Networkの発行を通じた情報発信、全国フォーラムやワークショップの開催を通じた情報共有、制度改善を目指した省庁交渉や国会議員へのロビイング活動などを柱に、幅広い活動を展開しました。

2000年代からは、国連の自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会、女性差別撤廃委員会などが日本審査をおこなう際に、関連するネットワーク団体と協力したNGOレポートの提出や、国連の委員への働きかけなど、国際的なロビイング活動にも取り組みの幅を広げました。
とくに、技能実習制度に関する取り組みは、国際的なロビイングの象徴的な活動といえます。
2000年代から研修生・技能実習生問題に取り組んできた支援現場からの報告を国際社会に訴えた結果、アメリカ合衆国や国連から改善を求める勧告が出されるなど、技能実習制度の見直しや、その後の「技能実習法」制定などにつながっていきました。

【2015年〜】NPO法人としての再出発:すでにここにある「移民社会」にふさわしい社会のあり方を求めて
わたしたちの活動・ネットワークの裾野はだんだんと広がっていきましたが、日本における外国人政策は、入管法による管理・排除の強化と使い捨ての労働者の受け入れという根本的な構造が変わらないままでした。
2010年代には、日本社会でともに暮らす外国籍者の数は1990年代の3倍に増え、移住者の定住化も進みました。
また、外国人労働者の課題にとどまらず、国際結婚女性や外国ルーツをもつ子ども、さらには高齢化など、課題は多様化・多面化していきました。

こうした社会状況を受けて、2015年10月、移住連は支援のネットワークやアドボカシー活動の継続とさらなる飛躍を目指し、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」として再出発。
時の政権が「移民政策ではない」と語りながら、その場しのぎの外国人労働者受入れ政策を続けるなか、移住連は移民の権利と尊厳を保障する「包括的移民政策」を求め、政策提言、情報発信、ネットワーキングという従来の活動の柱を継続しつつ、市民社会への発信や当事者コミュニティとの連携をさらに強化できるよう取り組みを続けてきました。

情報発信

情報誌『Migrants Network』(M ネット)の発行や、HP・SNSなどを通して、移民に関わる法律や制度の動き、地域の取り組みや移民の声を社会に広く伝えられるよう、取り組みを続けています。
また、日本に暮らす移民・難民、外国ルーツをもつ人びとの姿を伝え、エンパワメントすることを目的として、チャリティカレンダーの制作も行っています。
2023年からは、入管法改定や技能実習・特定技能などの外国人労働者受入れ制度の見直しなど、日本における移民・難民を取り巻く問題への関心が高まっている一方で、内容が複雑でよく分からないという声が多く届いたことから、オンライン連続入門講座を開始。

2ヶ月に一度のペースで開催しており、現在まで17回の講座を行ってきました。
講座では毎回講師をお招きし、いま現場で起こっている課題やそれにまつわる制度の問題についてお話しいただいています。
国会ロビイング

技能実習制度に関する新法や、特定技能の創設、在留管理のための入管法改定案など、日本に暮らす移民・難民に関連する法案が国会で議論された際には、移住連の代表が参考人として意見陳述を行うことも多く、また、個別の議員に対するロビイングにも取り組んでいます。
省庁交渉

制度や政策改善に向けたロビイング・アドボカシー活動として、1990年代から省庁交渉を継続的に行ってきました。現在では年2回の定期交渉となり、その領域は労働、技能実習、女性、子ども・若者、難民・収容、医療・福祉・社会保障、入管共生施策など、多岐にわたっています。
「ここにいる」キャンペーンと「移民社会20の提案」
2017年には移住者の権利キャンペーン2020「ここにいる koko ni iru」を実施しました。
移民・外国ルーツをもつ人びとが日常の中で生きている現実をさまざまな形で発信することや、タウンミーティングやイベントなどを通じて多様な人の声を集め、移民社会のための法制度や政策の整備を求める提言づくりにも取り組みました。

2019年6月には、移住連を含む様ざまな団体が実行委員会を結成して「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」を開催。900名を超えるさまざまな人びとの参加がありました。
また、東京フォーラムでは、「ここにいる」キャンペーンを通じて取り組んできた移住連の新たな政策提言「移民社会20の提案」を発表しました。
「入管法改悪反対」
2019年以降、非正規滞在者の入管収容施設での長期収容が社会問題化する中、日本政府は非正規滞在者や難民申請者に対する排除と送還の方針を固め、2021年には改悪入管法を国会に提出しました。これに対してわたしたち移住連は関連団体と「STOP長期収容市民ネットワーク」を結成。協働して入管法の改悪に反対する緊急アクションに取り組みました。

2021年3月6日、入管収容施設でスリランカ出身の女性、ウィシュマ・サンダマリさんの命が奪われました。この出来事に対する社会的な関心の高まりもあり、入管法改悪に反対する有名・無名、団体・個人を問わない多くの市民や、当事者の声がSNSやメディア、国会前などで大きなうねりとなり、法案を事実上の廃案に追い込むムーブメントとなりました。
市民社会の中でも入管行政に対する課題認識が広がり、SNSや街頭での活動によって反対する人々の声が可視化されることで、政治を変えられるという大きな体験となりました。

しかし、2023年、難民申請者・非正規滞在者をターゲットとした入管法改悪案が再び国会に提出されました。
この時も反対運動に取り組みましたが、2023年6月9日に可決・成立し、現在、難民申請者や非正規滞在の状態にある人びとはますます過酷な状況に追い詰められています。
コロナ禍での緊急支援からアウトリーチ支援事業まで
2020年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて、従来から脆弱な立場にあった移民・難民の出入国、労働、生活困窮といった課題が表面化・深刻化したなか、移住連は新たな活動にチャレンジしました。それが「移民・難民緊急支援基金」の実施です。
緊急支援基金では、市民からの寄付や助成金で総額約5000万円を集め、移住連の支援ネットワークを通じて、困窮する移民・難民1645人に1人3万円の現金給付を行いました。
移住連がネットワークの力を生かして取り組んだ初めての直接支援活動でした。
また、緊急の対応が求められる課題も多かったコロナ禍では、必要な施策をその都度求める柔軟なロビイングやアドボカシー活動にも取り組みました。

移住連は、コロナ禍での緊急支援基金をきっかけとしたネットワークによる移民・難民支援事業を、その後も助成金を獲得しながら継続しており、2020年、2021年には「新型コロナ移民・難民相談支援事業」「移民・難民伴走支援事業」、そして2023年から2025年の「アウトリーチ手法による『新移民時代型』ネットワーク構築事業」へと発展させてきました。

「アウトリーチ手法による『新移民時代型』支援ネットワーク構築事業」では、昼夜を問わず奔走する支援者たちの活動費用の一部を支えるとともに、生活が差し迫った事態にある方がたに、食料・シェルター・医療費といった緊急費用を提供。
2023年7月から2025年8月までの約2年間で、生活に困窮したのべ491人に対し、1,764万4,244円の緊急支援を実施してきました。

このように、全国の支援者ネットワークを活用した困窮する移民・難民を対象とした緊急支援のほか、伴走支援・通訳支援を実施し、民間の緊急支援から公的支援へつなげる取り組みを行っています。
また、相談会や支援セミナーも開催し、各地の支援団体の相談対応・解決能力の底上げ、地域間の連携や、外国ルーツの支援者の育成など、支援を支える基盤・ネットワークの強化に取り組み、個別のケースから見えてくる課題を政策提言にも活かしています。

移住連の幅広い活動はみなさまの寄付によって成り立っています。
今回の寄付キャンペーンでは財政状況を鑑み、最低でも300万円のご寄付をいただくことを目標にしております。
ご寄付は500円から受け付けております。
ひとりでも多くのみなさまに関心を寄せていただき、ともに活動を支えていただければ幸いです。
ご支援のつかいみち
いただいたご寄付は、移住連の活動の運営費のほか
・移民当事者が参加する会議の通訳・翻訳費
・イベント運営費
・移住連のネットワークを活用して行う支援活動の緊急支援費
などに用いられます。


コロナ禍以降の世界では、貧困や格差の拡大が進み、戦争や紛争も拡大するなか、移民・難民を含むさまざまなマイノリティが複合的・交差的に周縁化され、それらの人びとが置かれている状況はより深刻になっています。
日本社会も例外ではありません。漠然とした不安や不満、生活苦があたかも移民や難民、外国にルーツをもつ人びとのせいであるかのように騙る誤った情報が飛び交い、そうした人びとをターゲットとしたヘイトスピーチやヘイトクライムが拡大しています。
また、選挙においても排外主義的な政策を掲げる政党や候補者が躍進し、政府による非正規移民への排除や強制送還が大手を振って進められるという深刻な事態が進行しています。
しかし、わたしたちが望むのは、すでにこの社会でともに生きている移民・難民、外国ルーツの人びとを含む、現実としての、実態としての、文字どおりの「わたしたち」の誰もが差別されずに、尊厳と希望をもって平和に暮らすことができる社会です。
そうした社会の実現に向けて一歩ずつ歩みを進めるためには、多くの皆さまの力が必要です。
わたしたちと一緒に、さまざまなルーツの人びとが安心して自分らしく生きられる社会をつくりませんか?




