1996年に設立された私たち「オビラメの会」は、尻別川で絶滅寸前となっているイトウ個体群の復元を目指して、活動を行っています(「オビラメ」はアイヌ語でイトウを意味する言葉に由来しています)。
集水面積1,640平方キロ、280本あまりの支流を擁する尻別川は、かつてたくさんのイトウが棲む銘川として名を馳せていましたが、水棲生物への配慮に欠けた河川改修や釣り人の捕獲圧などのさまざまな要因で、残念ながらイトウは激減してしまいました。
1990年台後半の約5年間に渡る河川調査の結果、尻別川で見つかったイトウの産卵床は0、稚魚はたったの1尾のみと、壊滅的な状況でした。
その後、さまざまな立場の方々からのご支援もあり、私たちの取り組みが進んだとは言え、尻別川の全流域で、イトウの自然繁殖が確認されている場所は、現在、中流域にたったの2カ所だけです。
このうちの1カ所は、「オビラメの会」が2004年から再導入をおこなっている繁殖地です。
再導入した人工孵化魚の生き残りが順調に成長する間に、イトウが上流域の産卵場に遡上できるよう、流域行政のみなさまと協働し、複数の河川構造物を改修した結果、おかげさまで放流から8年後の2012年春に放流魚による自然繁殖が初確認され、さらにその7年後の2019年の夏には孫の世代が誕生し、世代交代が進んでいます。
大切な春の産卵期には繁殖行動が妨げられないよう、私たちは24時間体制で見守り活動も行なっています。
今では流域の子供や大人たちが産卵の見学に訪れ、大きな赤いイトウを見た時にあげる歓喜の声を聞けるようになり、私たちもとても嬉しく思っています。
また流域の学校では、私たちも出前授業などでお手伝いをさせていただきながらイトウについての継続的な学習も行われるようになり、地域の大切な宝物として地域のみなさまに強く認識されつつあります。
しかし、かつて産卵が確認されていた上流の産卵場所と、産卵期以外の生息域のほとんどが、いまだに多くの河川構造物で分断されたままでイトウ が自由に行き来することができない状態だったり、河畔林が伐採されてしまい稚魚の生育場所がなくなったりするなど、かつてのイトウが溢れる状態に尻別川を復元するには、まだまだたくさんの課題があります。
流域にお住まいのみなさまや、釣り人のみなさまにも、さらなるご理解やご賛同の輪を広げていくことも不可欠です。
目標達成に向け、諦めることなく継続的に活動を行う私たち「オビラメの会」に、みなさまからの温かいご支援を心からお待ちしております。