わたしたちのスローガン
ぼくらの海をプラ汚染から守ろう!
プロポジション(パーパス)
オーシャンスイープ協会は「ぼくらの海をプラ汚染から守ろう!」というスローガンの『オーシャンリボン運動』を推進する一般社団法人です。
オーシャンリボン運動は、海のプラ汚染について動画や写真で社会に共有し、プラごみの発生抑制に取り組む人や会社を増やすことや、海からプラごみを回収・処分するしくみの社会実装を推進することで、マイクロプラスチック汚染から海洋生物と海産物の安全を守ります。
活動を始めた背景
日常的に海のプラごみを拾ってこれるのは海で働く職業人だけです。しかし、操業中に拾ったごみは海洋投棄規制条約(ロンドン条約)によって拾った漁業者が処分責任を負うことになっており、現状は金銭的な援助はないので全額自費負担です。それでも海を汚したくない一部の漁師さんは、海に捨てられているプラスチックごみを積極的に拾っていますが、陸から海へ流出するプラごみの量は多く、とても漁業者の善意だけでは負担しきれません。また、海ごみは塩分や水分の他に多くの木くずが混じった混合廃棄物で処分費用が高いため、「漂着ごみ」の処分費用を負担している海岸沿いの地方自治体も「漂流ごみ」までは公共事業化できずにいます。
一方、生分解性であってもプラスチックは海中ではほとんど分解はされないので、人間が能動的に回収しなければ海のプラごみは増える一方です。また、海に漂流して時間が経てばプラスチックは海底に沈んだり、紫外線や波によって砕かれてマイクロプラスチック(5ミリ以下の小片)になって回収が難しくなり、極小のマイクロプラスチックは海産物を通じて人の体内にも入ってきます。プラスチックはPOPs(残留性有機汚染物質)を吸着する性質があり、マイクロプラスチックは健康被害の原因と言われています(オランダのアムステルダム自由大学の研究チームによると被験者の77%から血中マイクロプラスチックが検出されました)。海洋生物と海産物の安全を守るためには、このまま何もせずに放置することはできないと考えました。
海洋プラごみ問題とは?
1) 『見えない汚染』が私たちの健康も脅かしている
プラスチックの分子構造はとても安定していて、紫外線や波によって小さなマイクロプラスチックになっても分解されているわけではありません。消化器官にプラスチックを詰まらせた生物が死んでいる写真はよく知られていますが、もっと恐ろしいのは極小のマイクロプラスチック(ナノプラスチック)が体内に運んでくる『見えない汚染』です。見えない汚染の正体は、乳がんや生殖機能異常などの原因になると言われている『POPs(残留性有機汚染物質)』で、製造時からプラスチックに含まれているものもあれば、水中で有毒物質を吸着するプラスチックの性質のために海水の10万~100万倍に濃縮されることもあります。ナノサイズのプラスチックは細胞膜をすり抜けてしまうほど小さいので体内への侵入を防ぐことが難しく、ナノプラスチックが運んでくる有毒物質が体に蓄積されてしまう危険性があります。
POPsはヒトのホルモンと構造の一部が似ていて『環境ホルモン』とも呼ばれます。ホルモンと結合するはずの受容体(レセプター)器官をふさいでしまうため、身体の健康を保つ働きが弱まって生殖機能や甲状腺機能などに重大な影響を及ぼす危険性があります。
<POPsによる健康被害の例>
●女性:乳がん・子宮内膜症の増加
●男性:生殖機能低下
●胎児:発育異常・知能への影響
では、どれぐらいの割合で人体にプラスチック粒子が侵入しているのかというと、アムステルダム自由大学(オランダ)の研究者らが2022年3月に発表したレポートでは、健康なボランティア22人から採取した血液のうち、77%の人からマイクロプラスチックが検出されました(ScienceDirect記事)。
また、カンパニア大学ルイジ・ヴァンヴィテッリ校(イタリア)のラファエレ・マルフェッラ氏などのチームが発表した論文で「脳に血液を運ぶ動脈にたまったプラーク(脂肪の多いコレステロール)の除去手術を受けた257人」を対象に術後34か月モニタリングしたところ、半数以上の人からプラスチック粒子が検出され、検出された人は検出されなかった人に比べて心臓発作や脳卒中を起こしたり、何らかの原因で死亡したりする危険性が5倍高いことが明らかになりました(BusinessInsider記事)。
そして日本でも、東京農工大の高田秀重教授たちの研究グループが日本国内に住む複数被験者の血液や臓器からナノプラスチックを検出しました(産経新聞記事)。
2)日本近海のマイクロプラスチック濃度は全海洋平均の27倍!
環境省からの委託で九州大学の磯辺篤彦教授たちの研究チームが2014年~2016年の間に実施したマイクロプラスチックの実態調査によると、プラごみ流出量が多い国の周辺から黒潮が流れてくる日本の周辺海域はマイクロプラスチック量が多く、世界中の海の平均値に比べて27倍も含まれていました。
3)2030年に3倍、2060年には4倍!放置は現状維持ではない
プラスチックの使用量が年々増えるに従って不法投棄も増え、陸から海に流れ出る海洋プラごみ量は急増しており、今や世界で年間800万トンも流出しています(環境白書およびWWFジャパンのサイトより)。現状のままだと日本周辺や北太平洋中心部の海域では2030年までに海洋上層での重量濃度が2016年比で約2倍になり、2060年までには約4倍となると予測(九州大学・礒辺研究室サイト)されている状況ですから、何もしないことは現状維持ではなく悪化していくことです。
4)海洋プラごみは半分以上が家庭ごみ、誰もが他人事ではない
たとえば、屋外のごみ箱からこぼれ落ちたペットボトルは風や雨に流されて川に流れてしまうことなどがフィールド調査で指摘されています。消費者のひとり一人が、海洋プラごみの原因になるような生活習慣がないか自己確認して、改善すべきところを改善していくことで、川や用水路を通じて海に流れてしまうプラごみも減らしていくことができます。
海洋プラごみのうち51%が家庭ごみ、34%が漁業ごみ、15%が農業や工業からのごみです(環境省資料および愛知県海岸漂流物環境学習サイトより)。海ごみの半分以上が街由来の生活ごみで誰もが他人事ではないので、プラごみの発生を抑制する生活習慣が浸透しなければ流出の元栓は閉まりません。
5)世界中で加速する脱プラスチックの取り組み
日本をはじめ、世界175ヵ国以上が参加する『国際プラスチック条約』が、2024年3月にはアジアなどの各エリア会議で議論され、2024年4月の国際会議を経て2024年12月には合意形成する予定です。
オーシャンリボン運動
オーシャンリボン運動とは、みんなで海のプラごみを減らしていく参加型運動です。この活動は「海のプラごみ汚染を広く知らせていく」活動と、すでに流出してしまった「海のプラごみを回収するしくみづくり」活動と、「プラごみの発生抑制に取り組む人や会社を増やす」活動の3つの柱で構成されています。海のプラごみ問題を解決することは政府や一部の企業だけでできる問題ではありません。
もちろん海はつながっているので日本だけの問題ではありませんが、一人でも多くの人が問題を知り、参加することで、少しづつでも社会が変わっていくムーブメントができると思います。まずは日本で世界の模範となる取り組みを示し、それが他国へも伝播していけばよいと思っています。また、『オーシャンリボン運動』を推進していくことを当社団のミッションとしています。
1)海のプラごみ汚染を広く知らせていく(閲覧を促す)
より多くの人に参加していただくためには、海のプラごみ問題のことについて知っていただくことなく参加者が増えることはありません。だからこそ、伝播活動や広報活動が重要です。海のプラ汚染については一般のメディアでも放送されていますが、限られた時間や紙面では情報が不足しがちなため、プラごみ関連ニュースを解説するYoutube動画『オーシャンスイープチャンネル』やfacebook・X(旧twitter)といったSNSを運営して、一人でも多くの人が海のプラごみ汚染について知っていただいたり理解を深めていただけるよう活動しています。
2)取り組む人や会社を増やす(参加を促す)
海にプラごみが流出する元栓を閉めていくために、できるだけプラごみを発生させないような生活習慣をひとり一人が身につけ、プラごみの発生抑制に取り組む人を増やすために、気軽に参加できる『写真ボランティア』、寄付や協賛、ESD講師の派遣、会員など、個人や法人が個々の事情に合わせて参加できる各種募集をしています。
3)回収するしくみをつくる(社会実装を促す)
海洋プラごみの処分は、海防法、廃掃法、海岸法、産廃法など、さまざまな法律や規制をクリアしていく必要がありました。しかし、環境省の『海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針』や『海洋プラスチックごみ対策アクションプラン』 により、漁業者や自治会やNPO等がボランティアで回収した海ごみを自治体が処理する場合の費用を定額補助(都道府県あたり最大1千万円まで)する制度が施行され、漁業者の皆さんが操業時に回収した海洋ごみについて、漁業者への負担に配慮しつつその持ち帰りを促進するための取り組みができるようになりました。同様に、内陸部では流出予防の取り組みができるようになりました。当社団では、公益活動に取り組む全国の漁業者、漁業組合、自治会、NPO法人等が予算を利用できるようサポートしています。
ご支援の使い道
当社団が推進する3つのミッションのうち、最もお金がかかるのは海洋プラごみを回収・処分する「海洋プラごみ処分チェーン」のモデルケースを構築して、海ごみを減らしていけるしくみを社会実装する活動です。
この活動は、持続可能で豊かな海を取り戻そうとする活動であり、国連が推進するSDGs14番目の目標「海の豊かさを守ろう」の達成に直接貢献するものですが、それを主な目的として活動資金の寄付を募集しています。あなたからの温かいご支援をお待ちしております 。
皆様から頂いたご支援は、下記のような用途に使用します。
・海洋プラごみにかかわる調査・研究開発の費用
・海洋プラごみ処分チェーンの実証実験や設備・技術の試験にかかる費用
・海洋プラごみ処分チェーンの運用費用(プラごみ保管設備の調達費、保管設備の仮設工事費、運搬車両レンタル費、運搬車両の法定表示費、収集運搬の許可申請費、産廃処分の許可申請費、許可申請に伴う講習参加費、分解や再資源化に伴う委託費および消費エネルギー費、保管場所近隣住民等への配布物印刷費・ポスティング費、人件費、輸送費、撤去費、委託費、消耗品費など)
・カーボンニュートラルのための間伐・植林費用・カーボンクレジット費等
・残渣(灰・炭・金属など)の引き取り処分費用
・プラごみを減らすためのコンテンツ制作費・発信費用
・旅費交通費・通信費・人件費・広報費
・自主事業費
・その他、事務局の運営費
当社団は持続可能な海洋プラごみ処分の方法を確立するために活動しており、そのための必要経費は、行政からの補助金を除いてすべて会員の年会費及び寄付金から捻出しています。
◆お問い合わせページ(社団公式HP)