サポートの方法
POSSEへの寄付の種類には、①今回のみ、②毎月、③毎年の3種類があります。③は、POSSEの「サポート会員A」扱いとなり、年3回の季報、雑誌『POSSE』の無料送付を行なっています(年会費12,000円)。ぜひ継続的な寄付へご協力をお願い致します。
活動・団体の紹介
NPO法人POSSEは2006年の結成以降、「ブラック企業」、「ブラックバイト」といった若者の労働問題に取り組んできました。東京と仙台に事務所を構え、全国から電話やメールを通じて無料で受け付けている労働相談、生活相談へは、毎年3000件近くの相談が寄せられています。
2013年には代表の今野晴貴が執筆した『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)がベストセラーになり、流行語大賞にもノミネートされました。「ブラック企業」問題が解決すべき社会問題として認知され、政府も「働き方改革」を進める大きなきっかけとなりました。
また、2021年3月、毎日新聞社が共催する「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」において、「第8回エクセレントNPO大賞」「市民賞」の2賞を受賞いたしました。
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(ベストセラーとなった『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』をはじめとする書籍)
活動の背景、社会課題について
そして、3年ほど前から私たちPOSSEは、新たにLGBTQの労働問題の改善に力を入れています。LGBTQとは、L:レズビアン(女性同性愛者)、G:ゲイ(男性同性愛者)、B:バイセクシュアル(両性愛者)、T:トランスジェンダー(生まれた時の性別と自認する性別が一致しない人)、Q:クエスチョニング(自分自身のセクシュアリティを決められない、分からない、または決めない人)など、性的少数者の方を表す総称のひとつです。
LGBTQの労働問題には様々なものがあります。例えば、職場においてアウティング(LGBTQ当事者であることを本人の同意なく第三者に暴露すること)をされたり差別的な言動を受けることや、そもそも就職活動をする際に履歴書の性別欄があることによって半強制的にカミングアウト(LGBTQ当事者であることを他者へ伝えること)を強いられるなどの人権侵害が生じています。
私たちはこれまでこうしたLGBTQ特有の労働問題の相談をメールや電話で受け付け解決してきましたが、その一方で、実際に私たちの窓口へ相談を寄せ、解決に結びつくケースはまだまだ氷山の一角です。
国のデータからはLGBTQの労働問題の深刻さがわかります。2020年に厚生労働省が国の事業として初めて職場のLGBTに関する実態を調査しましたが、その調査ではLGB(同性愛や両性愛者)の約4割、トランスジェンダーの5割以上が職場で困りごとを抱えているという高い数値が示されました。
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また、実際に職場で「同性愛やトランスジェンダーをネタにした冗談、からかい」などを見聞きしたことがあると答えた人は、LGBの19.2%、Tの24.8%にものぼりました。こうした状況下で、性的マイノリティであることを理由に職場で不快な思いをしたことや働きづらくなったことがきっかけで転職した経験について問うと、LGBの5.8%、Tの20.4%が経験があると回答しています。
そして、働くうえで困ることがあった場合の相談先に関する調査項目については、「相談先がない」という回答が最も高く、レズビアンの30.9%、ゲイの40.7%、バイセクシュアルの37.6%、トランスジェンダーの44.7%に上っています。
以上の調査結果からは、LGBTQは職場で多くの深刻な困難を抱えている現状が確認できるとともに、そのような困難を抱えた際に頼る「相談機関の不在」が社会的課題となっていることが明確になっています。
活動内容の詳細、実績について
(1)職場で起きたアウティング事件
具体的な活動として、2020年春から、東京都内の保険代理店で働いていたAさんに生じたアウティング事件に取り組んできました。Aさんが勇気を振り絞って初めて職場でカミングアウトしたところ、すぐに上司が「1人くらいいいでしょ」と同僚へアウティングをしました。Aさんは心身の不調をきたし、休職後、退職せざるを得ない状況へ追い込まれてしまいました。
Aさんは、なんとか私たちの窓口に相談を寄せ、会社と話し合いを持つことになりましたが、当初会社はアウティングについて「善意でやった」などと問題を認めようとせず、深刻な二次被害も発生しました。それに対して、私たちは行政への通報や厚労省での記者会見、問題を社会に訴えるデモンストレーションなどを行いました。その結果、2020年10月、会社は事実を認め、謝罪や賠償、再発防止の約束をするという解決を実現することができました(「LGBTQの「アウティング」に全面謝罪 当事者は「制度」をどう活用したのか?」)。
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(厚労省で行った職場でのアウティング事件の解決記者会見の様子)
さらに、2021年4月、Aさんは同様の問題をなくすために、職場でのアウティングによる精神疾患の発症を「労働災害」として認めるよう、国に対して労災申請をしました。労災認定がなされると、治療費や休業中の生活補償が支給されることはもちろん、加害行為に対する使用者や加害者の責任を問いやすくなり、社会的に職場のアウティングをなくすことにつながります。
2022年4月、国はAさんの精神疾患を労働災害と認定する決定をしました。職場のアウティングによる精神疾患発症が労働災害と認定されたのは、知る限り日本で初めての事例です(「俺が代わりに言っておいてやった」 LGBTQの「アウティング」被害で労災認定)。
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(厚労省で行った職場でのアウティングの労災認定を報告する記者会見の様子)
Aさんがこれら闘いを振り返った動画は以下になりますので、ぜひ多くの皆さんにご覧いただけたらと思います。
(2)履歴書の性別欄をなくすためキャンペーン
また、私たちはLGBTQへの人権侵害をなくすための社会キャンペーンも同時に進めています。就活で使う履歴書の性別欄廃止を求める社会キャンペーン「履歴書から性別欄をなくそう #なんであるの」を昨年春からスタートしました。
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(オンライン署名ページ:履歴書から性別欄をなくそう #なんであるの)
法律上の性別と、現在暮らしている性別が異なるトランスジェンダーの人たちは履歴書の性別欄のせいで半強制的にカミングアウトを強いられ面接で落とされています。トランスジェンダーの約9割が就職活動の際に困難を感じたという調査もあります。
私たちは、そのような差別的な履歴書を変えるためにネット署名キャンペーンをスタートし、厚労省や経産相、履歴書メーカー等へ署名の提出と申し入れを繰り返し行いました。
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(経産省への署名提出に関する記者会見の様子)
その結果、昨年12月には履歴書メーカー最大手のコクヨが性別欄のない履歴書の販売を始め、今年4月に厚労省が国として初めて性別欄を任意とする新たなモデル履歴書様式を示すなどの大きな変化が起きてきました(「日本の「履歴書」は差別的? 政府が新モデルを提示。国際比較も」)。
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LGBTQの取り組みに関する報道実績(一部)
2021年5月22日 東京新聞
「#職場でのアウティングは労災」…労災申請の同性愛者の男性、6月に厚労省に署名提出へ
2021年04月16日 NHK
2021年4月7日 NHK
職場で「アウティング」被害者に会社が謝罪 解決金支払う 東京
2020年12月23日 日本経済新聞
2020年06月30日 huffingtonpost
「カミングアウトを強制される」 履歴書の性別欄の削除求め、トランスジェンダー当事者らが会見
2020年6月12日 朝日新聞
寄付金の使い道について
(1)人員体制の整備に必要な諸経費
専門相談員の人件費、育成費や交通費等
(2)通信費、消耗品費
労働相談に対応するための電話代、ホットライン代、ファックス代、コピー代等
(3)広報費
労働相談増加のための活動周知に必要なHPの改善や動画作成などWEBサイト制作費・デザイン費・動画制作費等
(4)イベント開催費
LGBTQ労働者が抱える労働問題を当事者や専門家と一緒に共有・検討するイベントにかかる費用(施設代・講師代・宣伝費等)
(5)調査・研究費
LGBTQ労働者に関連する労働相談の傾向分析や統計報告に必要な費用