サポートの方法
POSSEへの寄付の種類には、①今回のみ、②毎月、③毎年の3種類があります。③は、POSSEの「サポート会員A」扱いとなり、年3回の季報、雑誌『POSSE』の無料送付を行なっています(年会費12,000円)。ぜひ継続的な寄付へご協力をお願い致します。
POSSE(ぽっせ)とは
2006年に発足し、毎年数千件の労働・生活相談に対応し、未払い賃金の請求やハラスメントへの対処法など職場の労働問題に対する具体的な解決方法をアドバイスしてきました。
最近では過労死やハラスメント自死に関する相談が増えてきており、「数日前に夫が倒れてそのまま亡くなった。仕事が大変だと言っていたので過労死だと思う」「子どもが自死して、遺書に会社でいじめにあっていたことが書かれていた」といった、深刻な相談が多数寄せられています。こういった相談に対して、専門スタッフが、働いていた際の証拠収集(労働時間やハラスメントなど)のサポートや労災申請の続きの支援、弁護士の紹介など、ご遺族に寄り添って解決に向けた支援を行っています。
また、国に過労死対策をはじめて義務付けた法律である「過労死等防止対策推進法」(2014年)の成立にも尽力し、過労死遺族や弁護士、過労死問題に取り組む労働組合などとともに全国的な署名活動や院内集会も含めた啓発イベントの開催に関わりました。
POSSE代表理事の今野晴貴は、毎年11月に開催される厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」の講師として、これまで全国各地のシンポジウムで過労死問題について発言してきました。2024年は、宮城県、佐賀県、香川県などで開催されるシンポジウムで講演する予定です。
相談窓口
メール:soudan@npoposse.jp(24時間受付)
電話:03-6699-9359(平日 17:00-21:00 / 日祝13:00-17:00 水曜・土曜定休)
日本の過労死の現状
日本では過労死が一向に亡くならないどころか、状況は悪化しているとも言えます。
そもそも、過労死・過労自死とは、仕事における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患によって亡くなったり、仕事における強い心理的負荷による精神障害によって自死してしまったりすることを指します。厚生労働省によれば、2023年度には137人が過労死として労災認定をされており、2000年度以降は毎年200人弱が亡くなってます。
しかし、これは国が労働災害と認定したケースであり、その背後には、過労死であっても労災と認定されていない事案が膨大に存在すると言われています。じじつ、「勤務問題」が原因で自死に至った人が毎年2000人〜3000人おり、上記の数百人が氷山の一角であることは明らかです。また、労災申請件数は毎年右肩上がりであり、2023年度は初めて4000件を超えました(存命の方も含む)。しかし、認定されているのは1000件ほどであり、遺族などが「過労死かもしれない」と思っても、公的な認定を受けられていない現状があります。
過労死を引き起こした企業も、タイムカードを破棄したり、「ハラスメントはなかった」と虚偽の証言をすることで責任を回避することがほとんどで、過労死事案の多くは国の認定も受けられず、遺族は泣き寝入りに追いやられているのが現状です。
そのような状況の中で、過労死の遺族が労災申請や企業への責任追及など権利行使ができるようになる環境を整えることが、日本社会から長時間労働や過労死、ハラスメントをなくしていく契機になると私たちは考えています。
これまで支援してきたケース
家事労働者過労死事案
Aさん(当時68歳)は、認知症を患う寝たきりの高齢者(要介護度は一番重い「5」)の個人宅にて住み込みで働いていました。常時対応が必要なため、2015年5月20日から26日までの1週間、ほぼ24時間休みなしで、清掃や洗濯、食事の用意、介護など家事業務と介護業務が渾然一体となった状態で働いていました。
明らかな過重労働の結果、Aさんは急性心筋梗塞で亡くなりました。しかし、労働基準法では個人過程と契約する「家事使用人」は労災などの対象外となっていたため、Aさんの死は過労死と認められませんでした。それを不服に思ったご遺族は、裁判でAさんの労災認定を求めました。
また、オンライン署名を集めて、厚生労働省にAさんの労災認定および家事使用人などすべての労働者に対する労災など労働法の適用を求めました。
その結果、今年(2024年)9月、東京高裁はAさんにたいしては労災が認定されるべきだという判断を下しました。労働基準法では長年、「対象外」とされていた「家事使用人」として働くひとに対してはじめて労災が適用されるという画期的な事案です。
事案についての詳細は、「家事労働者」過労死裁判が歴史的勝訴 不正義を闘い続けた遺族等の思いとは?も合わせてご覧ください。
POSSEの活動について
①労働・生活相談
家族が亡くなり「過労死かもしれない」と思っても、どこに相談すればよいのかまで把握しているご遺族は少ないと思われます。POSSEは「過労死相談センター」という過労死の問題を専門的に受け付ける窓口を設け、気軽に専門家のサポートを受けて、労災などの制度の「使い方」を知ることができるように、労働相談を無料で行っています。
②過労死ご遺族のサポート
労災申請のサポート
長時間労働やパワハラを国に認めさせるための証拠集めや労働時間計算などを専門知識をもったスタッフと一緒に進めます。例えば、携帯やパソコンや手帳から必要な情報を探したり、協力してくれる関係者から聞き取りをしたりすることで、労災申請時に必要証拠として提出できるように準備します。
専門家の紹介
「国が労災と認めなかった」、「会社に過労死の責任を認めさせたい」などの理由で裁判をご検討の方には、過労死問題に詳しい弁護士を紹介することができます。弁護士のなかにも、労働者側では引き受けてくれなかったり、必ずしも過労死や労災といったテーマを専門的に取り組んでいるわけではない方もいます。そのため、事案の内容や地域に応じて、適切な相談窓口を紹介しています。
裁判の支援
また、POSSEでは裁判傍聴支援もおこなっています。過労死の裁判は判決までに数年かかる場合が多く、遺族に対する精神的負担も少なくありません。最後まで裁判を続けられるように、POSSEや連携する労働組合のメンバーで継続的に裁判傍聴を行い、精神的なサポートをすることができます。
③情報発信
過労死や過労自死に関する情報があまりに不足しているがゆえに、身近な方が仕事を理由に命を落としても、必ずしもご遺族が「過労死・ハラスメント自死かもしれない」と「気づく」とは限りません。POSSEに寄せられる数多くの過労・ハラスメント相談を調査・分析し、過労死の実態や企業が過労死を隠蔽しようとする対応などをメディアなどで発信することで、同じような状況に置かれたご遺族が「私の家族も、もしかしたら過労死かもしれない」と認識し、専門家に相談できるように、情報発信を行います。
④他団体との連携
過労死問題に取り組む遺族団体や弁護士、労働組合や各種労働団体などと連携して、過労死をなくすための啓発活動や現場での支援活動を行っています。
POSSEに相談したご遺族の声
2011年、私が15歳の時に父は51歳で脳幹出血を発症して亡くなりました。長時間労働が原因でした。母が労災申請を行い、1年後に労災認定されました。その後、「会社に過労死の責任を取らせたい」と思いましたが、何をしたらいいのか分からず6年経ちました。
2017年、偶然見つけたPOSSEに相談をしました。証拠集めや会社の調査を一緒に行い、過労死問題に詳しい弁護士を紹介してもらい、裁判を始めることができました。裁判の流れや裁判費用のことなどはPOSSEのスタッフに気軽に質問することができたので、十分に納得しながら裁判を進めることができました。裁判中は精神的に辛くなることもありましたが、多くの方に傍聴支援をしてもらえたので非常に勇気づけられました。
2020年3月に出た地裁判決では完全敗訴になりましたが、諦めずに控訴した結果、2021年1月に出た高裁判決では会社や経営者に責任を認めさせることができました。記者会見を行ったり、父の事件を様々なメディアで発信して多くの人に知って貰えたことが裁判の勝訴につながったのだと思います。
寄付金の使い道について
①相談活動に関する費用
- 過労死ご遺族や当事者から寄せられる電話・メール・SNSによる相談の人員体制に必要な経費(専門相談員の人件費、育成費や交通費等)
- 通信費、消耗品費(労働相談を受け付ける電話代、ホットライン代等)
- 相談員の育成にかかる経費
- 事務所維持費(東京および宮城・仙台支部)
②過労死ご遺族のサポートに関する費用
- 相談対応のための交通費
- 証拠集めや整理のためのコピー代など諸経費
③社会発信に関する費用
- 労働相談の傾向分析や統計報告に必要な費用
- チラシ印刷代など
受賞歴
- 2013年:POSSE代表理事の今野晴貴が『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)が第13回大佛次郎論壇賞を受賞しました。
- 2013年:ユーキャン新語・流行語大賞トップテン:POSSE代表・今野晴貴が「ブラック企業」で受賞しました。
- 2021年:エクセレントNPO大賞を受賞しました。
メディア出演歴
多数のメディアで私たちの活動が取り上げられました。詳しくはこちらをご覧ください。