Social Change Agencyの活動に関心を寄せてくださり、どうもありがとうございます。代表理事の横山です。

私たちの社会には、誰もが安心して生活できるよう設計された400以上の社会保障制度や相談窓口が存在しますが、必要とする人々に適切に届いていないという現実があります。これは人々の自由、生活、生命を脅かす大きな社会問題です。
社会保障制度は、その利用において、制度の情報を知っていて、その内容を理解でき、申請に必要な書類を揃え、窓口に足を運び、自分の状況を説明するなどのプロセスが必要ですが、このプロセスが障壁になってしまい、制度の利用から排除されてしまう人たちがいます。
この現状を変えていくためには、多層的かつ多様な主体によるセーフティネットを編み直すアプローチが必要です。
私たちSocial Change Agencyは、福祉と教育を組み合わせたアプローチによって、この問題に取り組んでいます。
セーフティネットである社会保障制度にアクセスができないという課題
数年前、医療機関で社会福祉士として働いていた私は、似た経緯で入院した8人の患者さんを担当しました。彼らは経済的理由で住まいを失い、ネットカフェで暮らしながら日雇いで生活していました。保険証を持てず、医療費の全額負担では受診できずに倒れ、救急搬送されてきたのです。
私は彼らと話し、生活保護の申請や住居確保の手続きを支援しました。その過程で驚いたのは、誰ひとり家賃補助や保険料減免などの社会保障制度を利用していなかったことです。「若いと使えないと思った」「住所がないから無理ですよね」「自分が対象だとは思わなかった」――。返ってきたのはそんな言葉ばかりでした。
制度の存在を知らなければ、利用することはできません。申請主義をとる以上、情報にアクセスでき、制度を理解し、書類を用意し、自分の状況を説明できる人だけが制度を使えるのです。それ以外の人にとって、社会保障は本当にセーフティーネットと言えるのでしょうか?
データで見る課題の現状
内閣府「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」によれば、収入水準が最も低い世帯(※)においてすら、子育てに関する金銭支援制度で5割前後、生活保護は6%、子育てや生活困窮の窓口利用は1%台という低い利用率となっています。 ※等価世帯収入が「中央値の 2 分の 1 未満」の世帯を指します

この収入水準ではほとんどの世帯が制度の対象となるはずですが「制度の対象外だ」と誤って認識をしているケースも多く、さらに「利用をしたいが知らなかった・利用しにくい」という回答も、制度によって約1割存在します(「生活保護」「母子家庭等就業・自立支援センター」のデータを抜粋して以下に提示)。

なぜセーフティネットたり得ないのか?に対する2つの事業
この課題が生じる原因として、大きくは以下の2つがあると私たちは考えています。

1.の「支援利用プロセスの障壁」はつまり、利用申請の手続きが複雑・煩雑であること、さらに言えばそもそも「申請」が必要なため、自身が申請できる制度があることに気づかなければ利用プロセスを開始することすらできません。
私たちはこれらの問題に対し、制度アクセス改善事業を行っており、制度を自動案内するAIチャットボットの開発を行っています。
2.の「支援を利用することの心理的障壁」については、社会保障教育事業がその解消を担っています。Social Change Agencyは、心理的障壁が個人の中に生まれてしまう前に、予防をすることが重要であると考えています。
社会保障ゲームについて
人生の早期に社会保障制度を知る機会を創出し、誰もが制度を利用する権利があることを認識できるよう、中高生向けの「社会保障ゲーム」をSocial Change Agencyとして開発しました。

社会保障ゲームは試作版の提供を2024年3月からスタートし、560名・33箇所に対しトライアルを実施。体験者の74%から「知らなかった制度を知れた」と評価いただきました。また2024年12月にクラウドファンディングを通してご支援いただいた資金をもとに正式版を開発、2025年6月からは正式版の出前授業を全国の中学高校等で実施をしています。

活動報告掲載許可をいただいた学校での実施については弊法人ウェブサイトにて公開をしています。よろしければご覧ください。
<社会保障ゲーム参加者の声>

寄付金の使い道
皆さまからいただいたご寄付は
・社会保障ゲームの出前授業にかかる経費(ファシリテーターへの謝金、交通費、備品の購入など)
・事業運営費
に活用させていただきます。
月1,000円のご寄付で、中学高校1クラス(40人ほど)に1回、無償で社会保障ゲームの出前授業を行うことができます。
さいごに
社会保障制度の申請主義の壁は、一朝一夕に解決できる問題ではありません。しかし、私たち一人ひとりができる行動を積み重ねることで、少しずつ変化を生み出すことができます。
現在の社会保障制度は、時に社会の分断を生み出しています。分断は、私たちを支える多くの制度の存在を知らないことや権利意識の乏しさからも生じているように思います。
制度について語り合うこと、経験を共有すること、声を上げること――これらの行動が社会の認識を少しずつ変えていけるならば、私たち一人ひとりの選択や行動によって、こうした分断を解消し、社会保障制度を「いざという時に誰もが頼れる連帯の仕組み」として位置付け直すことができるかもしれません。
社会保障制度が名実ともにセーフティーネットとなり、誰もが必要なときに必要な制度を当たり前に利用できる社会へ―。
もし、Social Change Agencyを応援するよ!と思っていただけたようでしたら、ぜひ、共に、セーフティーネットの網目を編む「編み手」となってくださると嬉しいです。