■ なぜ、毎年コンテストを開くのか
痴漢抑止バッジの普及だけを考えるなら、デザインをひとつに決めて長く使った方がいい。
そのほうが認知も進み、コストもかからない。
でも、私たちは毎年コンテストを開いています。
そこには、はっきりとした理由があります。
痴漢抑止バッジは、「今まさに被害にあっている子」を守る力を持っています。
けれど私たちは、そこで終わらせたくない。
「自分の身を守って」と被害者にだけ責任を押しつける社会を変えたい。
痴漢は加害者が悪い。
そして、100年以上も見て見ぬふりをしてきた社会の空気も、変えなければならない。
このコンテストは、ただのデザインイベントではありません。
社会の意識そのものを変えていくための仕掛けです。
■ 10年で、社会は確実に動き始めた
活動を始めた10年前。
「痴漢にあった」と言うこと自体が、恥ずかしいことだとされていました。
誰かに相談しても、「そんな服を着てるから」「隙があったんじゃない?」
「自意識過剰」「勘違い」「モテ自慢?」
そんな言葉が、当たり前のように返ってきたんです。
傷ついた心に、さらに追い打ちをかけるような言葉。
それが“セカンドレイプ”だという認識も、当時はほとんどありませんでした。
でも、この10年で社会は少しずつ変わりました。
痴漢加害者の実態が報じられ、「痴漢は犯罪だ」と多くの人が理解するようになったのです。
あるニュースで、20年間痴漢を続けてきた男性が「自分の被害者は4万人以上」と語っていました。
4万人ですよ。
一人の加害者が、何万人もの被害者を生み出している。
この現実を知れば、「女は大げさ」なんて言葉は出てきません。
私たちは、こうした構造の歪みを見える形にしてきた。
そして少しずつ、「痴漢は個人の問題ではなく、社会全体の問題だ」という意識が広がってきた。
この10年は、沈黙してきた被害者の声が、ようやく社会に届き始めた10年でした。
そして、痴漢抑止バッジデザインコンテストも、その変化を後押ししてきたと自負しています。
■ 若い世代に、考えるきっかけを
このコンテストの主役は、学生たちです。
「俺は男だから関係ない」「自転車通学だから痴漢にあわない」
そう思っていた子たちが、「同世代の誰かが被害にあっている」と知る。
その瞬間に、他人事が自分事になる。
「自分にも何かできるかもしれない」
そう感じた若者が、初めて社会の問題と向き合うきっかけになる。
それこそが、このコンテストの本当の価値です。
学生を対象にした理由は、明確にあります。
第一に、被害に遭いやすい世代であること。
第二に、子どもが参加すれば保護者も関心を持つこと。
そして第三に、彼らが数年後には社会を動かす側の人間になることです。
学生時代に「痴漢は犯罪だ」と真剣に考えた人は、絶対に加害者にはならない。
そして、困っている子を見かけたとき、助ける側に立てる大人になる。
その循環をつくることこそが、社会を変える第一歩です。
■ デザインの力を、社会の力に変える
応募してくれるのは、デザイナーをめざす学生たちです。
広告、パッケージ、イベント、キャンペーン。
私たちが目にするあらゆるものの背後には、デザインがあります。
そして、そのデザインには、誰かの意識が反映されています。
だからこそ、デザイナーの意識が変われば、社会の見え方が変わる。
デザインが変われば、社会が変わります。
いまはまだ新米デザイナーかもしれない。
でも、10年後、20年後には、大きなプロジェクトを動かす人になる。
そのとき、彼らが「痴漢は許されない」「誰もが安心できる社会をつくりたい」と心の底から思っていたなら、社会は確実に変わります。
私はその未来を信じています。
だから、このコンテストを続けているのです。
■ あなたの一票で、社会を動かしてほしい
最終審査は、11月16日までです。
痴漢抑止バッジデザインコンテストのサイトから、どなたでも投票できます。
あなたの一票が、社会を変える力になる。
痴漢のない社会を、一緒につくりましょう。
一人ひとりの思いが集まれば、空気は変わる。
あなたも今日から、「社会を変えるひとり」です

