
ボランティアの内容は「チラシ発送作業」
今回のボランティアは、「第11回痴漢抑止バッジデザインコンテスト」のチラシを全国の学校に発送する作業でした。全国649校に、それぞれ50部ずつ送るという結構な量で、毎年この時期にやっています。
このチラシは、前回のコンテストで最優秀賞を受賞した学生デザイナーの大田さんが作ってくださいました。流行りの昭和レトロの雰囲気が取り入れられてて、とても評判がいいんですよ。
痴漢抑止バッジデザインコンテストの目的
このコンテストは学生さんを対象に毎年開催しています。ただ被害者に向けて「バッジをつけて自分を守ろう」というだけでなく、多くの学生さんや先生、親御さんも一緒になって痴漢問題について考え、解決の糸口を探る場としての意味があります。
まず気づいてほしいのは、痴漢問題は「自分とは関係ない」と思われがちですが、性別や通学方法に関わらず誰にでも起こりうる問題だということです。
自分に関係ないからとスルーせず、自分たちが学んでいる「デザイン」という力で、この社会の大きな課題を解決できると気づいてほしいと思っています。
デザインを考える中で、痴漢犯罪という問題と真正面から向き合い、自分ごととして考えてもらうことが、このコンテストの大きな目的です。
実際に過去のワークショップでは、男子学生から「痴漢されると女の子は気持ちいいんだろう?」というショックな発言もあったそうです。もちろんそれは間違いで、グループの女子は「被害に遭うと怖くて嫌だ。気持ち悪い」と伝えましたが、まだまだ誤った認識があることに驚きました。
だからこそ、コンテストは単なるバッジデザインの制作ではなく、こうした誤解や偏見を解きほぐし、社会全体の意識を変えていくきっかけの場でもあるのです。
私たちは、痴漢は被害者と加害者だけの問題ではなく、社会全体で解決していくべき課題だと認識してほしいと願っています。10年続けてきた活動の中で、少しずつですがその意識が広がってきているのを感じています。
学生の皆さんには、「デザインには社会を変える力がある」と伝えたいです。「世間の常識」に言葉で説得しようとすると反発されることもありますが、デザインは人の潜在意識にすっと入り込んでメッセージを届けることができます。とても大きな力なんです。
ボランティアの皆さんに助けてもらいました
今回の発送作業には2日間で6人のボランティアさんが集まりました。高校生から社会人まで幅広い世代の方々です。遠くは名古屋から大阪まで来てくださった方もいて、すごく嬉しかったです。
募集は「KVネット」というサイトを使いました。以前は人数が足りない時に過去のボランティアさんに個別で声をかけていましたが、今回はそうした声かけをせずに自然と参加者が集まりました。社会のボランティア意識が高まっているんだなと感じました。
作業は皆さんが手早くて、予定よりもかなり早く終わりました。休憩時間にはお茶を飲みながら和やかにおしゃべりしたり意見交換もでき、いい雰囲気で進められました。
特に印象に残っている高水さんとの会話
楽しい2日間の中で、10年に渡って当センターの活動を応援してくださっている高水さんとの話が、特に心に残っています。
高水さんとは、2016年2月に私が「性暴力を許さない女の会」で講演したときに知り合いました。それ以来ずっと見守り応援してくださっています。
高水さんは私が10年前に講演で「痴漢抑止活動はすぐに成果が出ないし、社会が変わるには30年かかる」と話したことを覚えてくださっていました。その言葉を聞いて、私は「ああ、そうだったな」と思い出し、胸が熱くなりました。
この「30年かかる」というのは、1970年代から始まった嫌煙運動が30年以上かけて社会を変えてきたことにヒントを得ています。タバコは身体に悪いけれど合法ですが、痴漢は明らかな犯罪です。だからこそ、タバコに対する社会の意識を変えられたなら、痴漢に対する意識も変えられるはずだと、私は10年前から強く信じているのです。
高水さんの言葉を聞き、当時の思いを改めて思い出し、気持ちを新たにしてこれからも活動を続けていこうと強く思いました。
初めてボランティアに参加する方へ
初めてボランティアに参加する方は、緊張や不安を感じるかもしれません。でも普段から気になる団体や私たちの活動をX(旧Twitter)などでチェックして、募集があれば気軽に参加してみてください。思ったより和やかで温かい場だと感じてもらえると思います。
私たちの活動が10年以上続けられているのは、長年にわたって応援してくださる皆さんのおかげです。皆さんの支えがあってこそ、私たちは活動を止めずに続けていけます。心から感謝しています。
これからも一緒に、安心して電車に乗れる社会を目指して努力を続けていきたいと思います。サポーターとして、できる範囲でご支援してくださるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
