
◆ 第11回痴漢抑止バッジデザインコンテスト
第11回痴漢抑止バッジデザインコンテストの応募受付が終わりました。
今回は 35都道府県、148校から1014作品もの応募がありました。
そのうち53校が授業や課題として「痴漢抑止」を取り上げてくださっています。学生が痴漢について授業などで真剣に考えてデザインを制作してもらえるというのは本当にうれしいです。
コンテスト参加者には、当センターが制作したアニメーション「学生に知ってほしい痴漢の真実」を見るようお願いしています。課題校ではそうした点もしっかり取り組んでくださっているのでしょう。課題でとりあげている学校が、一次審査を通過しているケースが多く見られました。
◆ 審査の流れ
一次審査は大学生によるWEB投票です。1014作品の中から、わずか60作品が選ばれる狭き門。
現在は、二次審査の真っ最中です。中学・高校生が好きなデザインを3点選ぶ形式です。こちらは学校の先生方に協力いただき、やはり「学生に知ってほしい痴漢の真実」を視聴し、痴漢犯罪について知識を得たうえで審査に参加していただいています。
痴漢抑止というテーマだと、どうしても女子が中心の活動に見えがちですが、学校が授業で扱ってくれることで男子の参加も増えています。
今回の応募では、男性が全体の 32% を占めていました。性別を超えて痴漢や性暴力を「自分ごと」として考えることが、犯罪行為をなくしていくために必要だと、私たちは考えています。
◆ 忘れられないメッセージ
数年前のコンテストでは、ある女子生徒がこんな経験を寄せてくれました。
バッジデザイン制作に取り掛かる前のグループワークで、男子から「女は痴漢されたら気持ちいいんだろ」と言われたそうです。彼女は「そんなことはない。気持ち悪いし怖いんだ」と30分もかけて説明したそうですが、それでも半信半疑の様子で、とてもショックだった…
私もこのコメントを読んだとき、本当に驚きました。発言した男子高校生は、どこでそんな間違った知識を信じてしまったのか…。
でも同時に、このやりとり自体が「気づきのきっかけ」になったのかもしれない、とも願います。その後の経験で、彼が自分の間違った認識に気づいてほしいです。
◆ 今年寄せられたメッセージ
今年のコンテストにも、たくさんの声が寄せられています。その中から、いくつか紹介しますね。
「痴漢加害者は痴漢行為を許してくれそうな人を探している」というのは本当に怖いし、被害者の方は気持い思いるするんだろうなと思いました。痴漢抑止バッジで効果があると嬉しいですし、この世から痴漢が減ればいいなと思います。(佐賀県, 15歳, 女性)
「学生に知って欲しい痴漢の真実」という映像を初めて見たが、とても分かりやすかった。痴漢について腫れ物のように扱うのではなく、事実を教えてもらえるため、痴漢被害に遭った人、見た人、知らない人など多くの人に見て欲しい。痴漢抑止は多くの人を救う行為だと思った。(福井県, 16歳, 女性)
私の友達が高校の通学中に痴漢にあい、泣き寝入りになってしまったことがありました。私はその話を聞いたあとの悔しさからこのコンテストに参加しています。私たちはスマホなどの身近なツールで証拠を残し、声を上げることができます。少しでもみなさんに知って頂きたいです。(東京都, 16歳, 女性)
私は男ですが一度、痴漢にあったことがあり、言葉にできない気色の悪さを今でも覚えています。平和な日常を突き破られる感じは、誰にも味わってほしくありません。痴漢抑止の一助になれることを強く願います。(東京都, 36歳, 男性)
どんな理由があったとしても痴漢は決して許されることのないれっきとした犯罪です。私はコンテストを通じて痴漢抑止活動や痴漢に対する正しい認識を知ることができました。この活動がもっと多くの人に広まって痴漢被害にあう人が一人でも減るよう願って制作しました。(広島県, 20歳, 女性)
被害の経験を語ってくれた人、友達の体験をきいた人、アニメーションを見て初めて痴漢を「犯罪」だと認識した人…。
いろんな立場の声が集まっていて、コンテストが痴漢犯罪を真剣に考えるきっかけになっていることを実感します。
◆ コンテストを継続してきた積み重ね
これまでに痴漢抑止バッジデザインコンテストには、延べ1393校、8749人が応募してくれました。
審査員を含めると、過去10回と今回の応募で1万7650人 がコンテストに関わっています。今年の二次審査と最終審査が終われば、ついに 1万8千人に達します。
2015年にプロジェクトを立ち上げたとき、性暴力被害の解決に長年取り組んできた方から「社会課題に関心を持っていない人に、興味を持ってもらうのが一番難しい。松永さんはクラファンやコンテストで一般の人を巻き込んだのがすごい」と言っていただいたことがあります。
本当にうれしい言葉でした。
また別の方からは「痴漢撲滅の活動を怒りベースで広げるのではなく、学生に“可愛い・面白い・カッコいい”バッジを作ってもらうのはポジティブだ」と言っていただきました。これも心に残っています。
◆ さいごに
痴漢抑止活動を10年以上続けてきた中で、お金の苦労も含めて大変なことはたくさんありました。でも、多くの方の励ましとサポートで、コンテストや痴漢抑止バッジの配布を続けてこれました。
そして今年で、1万8千人が痴漢に対して「NO!」の意思を表明してくれます。この流れをもっと加速させたい。広げたい。
もっともっと多くの方が、痴漢や性暴力に対して毅然とした姿勢で「NO!」を示す社会にしていきたい。なぜなら、その先に痴漢や性暴力がない社会が存在するからです。
それが、コンテストに真剣に取り組んでくれた学生たち、被害に悩んでいる子たちに対して、私たちが大人として果たすべき責任だと思っています。
当センターの活動や理念に共感してくださった方は、ぜひサポーターとして活動にご参加ください。よろしくお願いします。