
この学校を運営していると、必ずと言っていいほど「勉強(教科学習)はやらなくていいんですか?」という質問を受けます。
実践を積み重ねた今では、「必要ありません」と断言できますが、当時はまだ理論上の話でした。理論的には必要ないし、問題ないと思っていましたが、「それが本当かどうか」は、実際に試してみないとわかりません。
そこで、一般的に基礎学力と捉えられる読み書き計算がどれくらい必要で、どんな環境であれば習得できるのか、その最低限の条件を探ろうと考えました。
できる限り外的要因を排除したかったため、一度でも学校に通った経験のある子どもは対象から外しました。なぜなら、彼らは全員「勉強」によって傷つけられていたからです。本来、「勉強(学ぶこと)は楽しい!」と思わせてくれるはずの学校で、「勉強は嫌い」「苦手」「できるだけやりたくない」という気持ちを抱いてしまっているのです。
最近主催した講演会で、「勉強が苦手」だと思う人は?という質問をしたところ、参加した300人近いほとんど全員が手を挙げました。残念ながら、これが現実なのです。
そこで、地元の学校に一度も通ったことがなく、叱られたり、急かされたり、周囲に評価されたりした経験がない新小学1年生を対象に実験を行いました。
教材には、eboardというオンライン教材を使用しました。この教材は、ポイントやゲーム性などの外発的動機付けをできるだけ排除したものを選びました。私の関わりも、まずは教材の使い方とタブレットの操作方法のみに限定しました。

ちなみに、対象となった子どもたちは幼稚園でもいわゆる「お勉強」の類は一切経験していません。学習は「10までのかず」から始め、その後、足し算、引き算へと本人のペースで進んでいきました。
また、ご家庭にも協力していただき、家で学習タイムを設けたり、本人からの要望がない限り何も教えたりしないようにしました。
その結果、2学期半ば頃までには、ほとんどの内容を終えることができました。そもそも小学1年生で学ぶ内容は、全く新しい知識というわけではないということもあると思います。
もちろん、これはたった1人の事例なので、これを根拠とすることはできません。しかし、何の働きかけもない中で、これだけのことができるということを知れたことは、私にとって大きな経験となりました。

重要なのは、本人の意思です。それさえあれば、生活に必要な教科学習は学校で教えなくても十分に習得できる環境であると、これまでの指導経験を踏まえて結論付けました。
「その程度で良いのか」という疑問もあるかと思いますが、偶然にもその後のコロナ禍における学校の対応で、学校側も授業を受けていなくても動画を見て問題に取り組めれば特に問題ないと認めることとなりました。
このような学校だと必ず聞かれる「勉強はいいんですか?」という大雑把な質問。おそらく重要なのは、そこで大人が自ら「勉強とは何か」「何のためにやるのか」といった本質を考えることなのではないでしょうか。
ちなみに、この小学1年生は現在小学6年生になりました。特に生活に困っていることはありません。そして、自己決定や対等性といった、幸せに生きるための基礎学力はしっかりと身についていると、私も保護者も思っています。
今回の研究で、子ども自身がどう思っているのかも明らかになれば良いと思っています。
金額3,000円 |
金額5,000円 |
金額10,000円 |
金額30,000円 |
金額50,000円 |
金額100,000円 |
金額3,000円 |
金額5,000円 |
金額10,000円 |
金額30,000円 |
金額50,000円 |
金額100,000円 |