活動・団体の紹介
特定非営利活動法人スマイルバトンは、全国の小中高、特別支援学校の先生が1万人以上登録する日本最大級の教員コミュニティ『先生の学校』を運営する株式会社スマイルバトンが2024年10月25日に設立したNPO法人です。

株式会社スマイルバトンは、次の世代や、次の次の世代が、バトンを受け取ったときに思わず笑顔になる社会づくりをするために2020年3月に創業。「いい転機、つくろう。」をミッションに掲げ、誰かにとっての「転機」となるような新しい選択肢を示すことやつくることが、その人の「希望」になると信じて、活動しています。子どもたちを取り巻く環境や制度、システムをつくっているのは大人たちです。だからこそ子どもたちのそばにいる大人が、まずは笑顔でいられる社会にしたい。そういった思いから、子どもたちのセカンドプレイスを支える「先生」に着目して事業を行ってきました。

株式会社スマイルバトンが運営する『先生の学校』は、社会問題となっている先生のなり手不足や定年退職以外の離職を解消するための取り組みですが、特定非営利活動法人スマイルバトンは、「地域の子どもを地域で支える」を理念に、不登校児童・生徒向けの教育環境の改善に取り組みます。
具体的には、自主事業による収益と、地域の営利企業・団体、個人の皆さまの寄付金で運営する「公立学校に近い経済負担で通うことのできるオルタナティブスクール」という、これまでにない新しい選択肢を、全国に広げていく取り組みです。2025年4月に、代表・三原菜央が生まれ育った岐阜市で1校目を開校します。
団体の沿革、実績
2020年3月 株式会社スマイルバトン創業、教育メディアコミュニティ「先生の学校」開始
2024年10月 特定非営利活動法人スマイルバトン設立
2025年4月 岐阜市にオルタナティブスクール「学藝の森CoE」開校予定
過去の成果
・教員向けコミュニティ「先生の学校」:登録者数1万人以上
・教職員向け雑誌「HOPE」発行、無料配布校1000校以上
・教育イベント・ワークショップ開催数:累計300回、参加者2.5万人以上
活動の背景、社会課題について
日本の初等教育の約98%は公立小学校であり、この環境に適応できない場合、学びの選択肢は極端に狭まります。 文部科学省の最新調査では、不登校児童・生徒数は34万人を超え、11年連続で増加 しています。特に低学年での増加が顕著であり、その要因として「先生との関係」「授業が合わない」「学校システムの問題」が挙げられています。(※参考)つまり、学校のシステムが子どもに適応していないということです。
これは、子ども自身の能力や意欲の問題ではなく、環境との不適応が表面化したものです。児童精神科医で岐阜市教育委員も務める加藤智美医師によると、子どもの「問題」を見立てる際には、「発達特性」「アタッチメント(愛着形成)」「トラウマ」の観点から、丁寧に観察・傾聴する必要があるとされています。(『怒りをコントロールできない子の理解と援助』大河原美衣、2004年)しかし、現在の学校教育現場には、その余裕がほとんどありません。
このような環境の中で、子どもたちの可能性は閉ざされていきます。行政が提供する「学びの多様化学校」や「校内フリースクール」は数が不足し、民間のフリースクールは高額な費用がかかるため、多くの家庭にとって利用が難しい状況です。その結果、不登校の子どもの約75%が自宅で過ごしており、興味関心を広げる機会や、多様な価値観に触れる機会を持ちにくくなっています。
しかし、子どもたちは本来、未知の可能性を持っています。学びの環境さえ整えば、子どもたちは新しい興味を見つけ、自己を表現し、未来を描く力を育むことができます。今、必要なのは「学校に戻ること」ではなく、「自分に合った学びの場を持つこと」です。
学校に合わなかったからといって、子どもたちの可能性が閉ざされる社会ではなく、どんな子どもも、自分らしく学び、未来を描ける環境をつくることが求められています。
活動内容の詳細、実績について
私たちは、民間学童や視察受け入れなどの自主事業を財源の柱としながら、地域の企業・団体、個人の皆さまからの寄付金や助成金も活用することで、公立学校に近い経済負担で、多様な子どもたちが安心して学べる場を提供することに挑戦しています。これにより、不登校児童・生徒、またその保護者が孤立することを防ぎ、社会とのつながりを再構築することを支援します。
スクール名は「学藝の森CoE(こえ)」と名付けました。子どもたちの声、すべての人の声を大切にする場でありたいという私たちの想いを込めています。

「学藝の森CoE(こえ)」には、以下の8つの特徴があります。
1.公立学校に近い経済負担で通える
2.保護者も共にこの場をつくり、子どもたちの育ちを支える仲間として関わる
3.異なる特性や背景を持つ、異年齢で少人数の子どもたちが共に遊び、学び、暮らす
4.SEL(社会性と情動の学習)を積極的に取り入れ、感情の理解や調整、共感性、対人スキルを身につける
5.16人の児童に対して、最低2名以上のスタッフを配置し、福祉的関わりを重視する
6.居場所ではなく、子どもたちが夢中になって遊ぶ学び舎を目指す
7.子どもたちの身体をつくる食事は、栄養士監修の手作り調理を提供する
8.作業療法士、小児科医、カウンセラーなど、専門家と連携し、きめ細かなサポートを行う
2025年4月に岐阜市で第1号となるモデル校を開校し、この場でのカリキュラムや子どもたちへの支援、スタッフ育成のノウハウを蓄積し、それらをオープンソース化することで、他の地域でも「学藝の森CoE」を立ち上げられるようサポートし、仲間を増やしていきます。
このような学びの場を全国に広げることで、不登校児童やその保護者が「孤立する」のではなく、「つながる」ことができる仕組みをつくり、誰もが自分らしく学び、成長できる社会の実現を目指します。
代表者メッセージ
城迫菜央(三原菜央)
株式会社スマイルバトン 代表取締役/特定非営利活動法人スマイルバトン 代表理事
岐阜県岐阜市生まれ。小学校教諭の両親のもとに育ち、自らもファーストキャリアとして教員を選択。大学卒業後、学校法人三幸学園にて専門学校・大学の教員となり、その後ベンチャー企業2社を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。2016年9月、本業の傍ら「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる教育メディアコミュニティ『先生の学校』を立ち上げる。2020年3月、株式会社スマイルバトンを創業。教育メディアコミュニティ『先生の学校』を運営。2021年度 PERSOL Work-Style AWARD 「ネクストキャリア部門」受賞

「先生の学校」という教育メディアを作るなかで、時には海外まで出向いて、本当に多くの教育現場を取材させてもらいました。取材すればするほど最先端の手法やコンテンツへの興味は薄れていって、どういうまなざしで子どもたちのことを見つめているかに関心が移っています。「私たちが向き合っているのは、いのち」そういうまなざしを持った方たちに深い感銘を受けます。
不登校の児童・生徒数は、最新の文科省の調査報告で34万人を超えています。私には、これが子どもたちからのSOSに聞こえるんです。これまで、子どもたちが思わず笑顔になる社会づくりのため、大人をエンパワーメントする事業をつくってきましたが、目の前にあるいのちに向き合って子どもたちと関わる学校や先生方、個人の方に出会うほど、また実際に不登校などで悩んでいる子どもたちに出会うほど、今目の前で苦しんでいる子どもの形をした”いのち”があることを知っているのに、行動しないのは違うんじゃないかという思いが強くなっていきました。
私は常々、未来を議論するより今が大事だと思っています。今の状況に手を打たずに良い未来は来ない。逆に言えば、今を大事にする積み重ねが自然と良い未来につながっていくということです。
今、目の前にいる子どもたちと徹底的に向き合うこと。大切にされたいのちは、同じように出会ったいのちを大切にすると信じているんです。そういう思いが今回のプロジェクトのスタートにあります。
今、教育には新しい選択が必要で、ないから作るんです。私たちがやろうとしていることは対処療法だと分かっています。でも、まずそういった場所ができて、全国に増えていったその先に、自治体や国の動きにつながっていくだろうと、全ての子どもたちが一人ひとりにあった環境で安心して学んでいる景色を見据えて始めたことです。ただオルタナティブスクールを一つ作るのではなくて、もう少し大きなプロジェクトとして捉えています。
寄付金の使い道について
異年齢×少人数ですごす「学藝の森CoE」のスタッフは、子ども16名に対して必ず2名以上。特別支援学級の水準です。ご支援の積み重ねがあれば、スタッフの人員を増強し、より丁寧な関わりと個別のサポートをすることができます。
「学藝の森CoE」には、発達に特性のある子どもたち、多様なニーズのある子どもたちも通います。児童精神科医、心理カウンセラー、作業療法士や理学療法士との連携を、より手厚いものにして、一人ひとりに合った支援をさらに充実させることができます。
このスクールで学ぶのは子どもだけではありません。保護者の方も安心して、悩みや困りごとを相談でき、一緒に学んでいくような関係性と仕組みを提供します。ご寄付により、このプログラムをさらに強化し、家庭全体の支援につなげます。