はじめに
お店をはじめて2年半が経過しました。これまで、ワンぽてぃとに来て、卒業していった人たちは23名にものぼります。一方で、15分から賃金を支給できるのは二人までが経営上の限界。受け入れを待ってもらっている若者もいるのが現状です。これまでに、同じような取り組みをしたいと同じ春日井市内はもちろん、全国各地から、また海を越えて個人、団体の方々が視察等に。しかし、物価高の煽りも重なり、実際に事業をはじめたり、若者を受け入れるのはそう簡単なことではないという声も少なくありません。当初、私たちは、目の前の若者に社会に出るための一歩の機会を創りながらも、ワンぽてぃとの取り組み、仕組みを全国に広げたいとの思いで突き進んできました。全国に広げたいという気持ちは今も変わらないのですが、一方で、ワンぽてぃとで働きたい、社会に出る一歩のきっかけが欲しいと願う若者を今以上に受け入れたいという気持ちも同時に増すばかりなのです。
そこで今回、ワンぽてぃと自体の事業の拡大を通して、より多くの若者を受け入れたいと思い、三度目のクラウドファンディングにチャレンジすることにしました。以下、そんな私たちの思いをご覧いただけると幸いです。
なぜ“超フレックスタイム制”で“15分”なのか?
ひきこもり状態にある人や不登校の人たちが、ちょっと一歩を踏み出してみようかなと思ったときに、気楽に、そして気負わずに来てもらうにはどうしたらいいかを考えたことがきっかけでした。
実は、私自身、不登校の娘を持つ母親でした。娘の気持ちを考えたときに、仕事に行きたいときに行けて、帰りたいときは遠慮なく帰られる、そんな自由に出社、退社ができる環境であれば働きやすいのではないか、と思い立ちました。そして、「15分から働けるというのはどう?」と娘に尋ねると、「15分だったらがんばれる気がする」との答えがかえってきたのです。
私たちのお店では、15分から最低賃金のお給料をお支払いするようにしています。働いてお給料をもらうのは、社会のなかでは当たり前のこと。当事者と言われる若者たちの多くは自己肯定感が低下しているなか、お給料を支払うことは、目に見える形でその人自身を認めることになります。
こうして、私たちは、“15分”から働ける“超フレックスタイム制”のカフェレストランとしてスタートしました。
2年半の実績と成果
ワンぽてぃとが本格オープンしたのが、2022年5月。この2年半の間、ワンぽてぃとには、全国から100人以上の働きたくても一歩を踏み出せない若者や保護者の方が訪れました。
若者の中には、途中で来れなくなった人もいたり、来れたり来れなかったりを繰り返す人もいますが、一人ひとりがワンぽてぃとにて社会との新たな接点を持つきっかけを掴んでくれています。実際に、ワンぽてぃとで15分から働く経験を通して進学したり、アルバイトを始めたりと、ワンぽてぃとを卒業していった人たちは、2024年12月時点で23名にも上ります。
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<当事者・ご家族からの声(一部)>
○「本人が、ワンぽてぃとに移住してでも通いたいと言っているのです。今まで、ここまで強く、外に出ようとしたことはなかった。」
– 長野県からご来店の親御様(2023年9月)
○「何度も踏み出そうとくじけて、苦しいときも何度もあったけど、少しずつお仕事をはじめることができ、今やっとフルタイムで働けるようになりました。」
– 社会復帰を果たした方(2024年3月)
また、ワンぽてぃとでは、働くこと以外にもさまざまな取り組みを展開してきました。
フードドライブの取り組みや、シンポジウムの開催、秋にはハロウィーン仮装パーティや、年末にはクリスマス会を開くなど、ここには書ききれないほどの取り組みを展開してきました。
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これらの取り組みに共通するのは、若者や親御さんからの「声」でした。ひとりひとりの「声」に耳を傾け、形にすることが、「声」をあげられなかった他の人たちのきっかけや居場所になっているのです。そして形になった一つひとつのプログラムが、働くこと以外にも、ワンぽてぃとに来る、またワンぽてぃとに来たい、ワンぽてぃとに居ていいんだと思えるしかけやきっかけ、動機づけになっていて、気づけばワンぽてぃとが安心していられる居場所になっていたのです。
ワンぽてぃととして次の“一歩”を
言うまでもなく、これまでの2年半は、決して順風満帆なことばかりではありませんでした。なにより、カフェそのものの経営の厳しさがありました。ご存知のとおり、材料費、燃料費の物価高の煽りは、私たちのような小規模な個人事業者の存在を脅かします。この間も、一部商品の値上げや、営業時間の変更など、経営面での工夫も凝らしながら歩みを進めてきました。そのようななか、ワンぽてぃとで“15分”の就労で賃金を一定期間、同時にお支払いできるのは2名が限界です。当事者の方の中には、長い間ひきこもり状態で過ごし、ワンぽてぃとの存在を知り、「ここでならやっていけるかもしれない」と勇気を出し一歩を踏み出して当店を訪れたという方も少なくありません。中には、賃金をお支払いできない間はボランティアスタッフとして働いていただいたり、登録だけしてお待ちしていただいている方もいる状況です。今の地域社会には、まだまだ受け皿が足りていないことは、眼に見えて明らかなのです。
一方で、カフェ運営以外に取り組んできたいくつものプログラムが、翻ってカフェ運営を支えてきてくれた面もありました。そして、その一つひとつがあるからこそ、当事者と言われる人たちにとって欠かせない居場所になっていることにも気づかされてきました。他の当事者の方の思いも形にしていきたい、そのような考えは日々強くなっていきました。
そこで考えた次の一歩は、これまで単発で依頼のあったお弁当事業の拡大です。日々のカフェ運営を継続しながら、安定的な収入確保を図るために、月で500食のお弁当販売を目指します。そのための営業活動にも本格的に力を入れていきます。そうすることで、仕事の幅も広がることから、若者たちの15分就労の機会も増やしていきたいです。これまで、お給料を支払うのは2人までが限界でしたが、収入増、仕事の増を図ることで4人まで支払える資金繰りを目指します。
<クラウドファンディングでいただいた資金の使い途>
・業務用冷蔵庫、冷凍庫の購入 400,000円
・お弁当運搬用の保冷コンテナ 100,000円
・広報媒体(のぼり、ステッカー、チラシ)の制作 200,000円
・業務用パソコンの購入 200,000円
・お弁当事業が安定化するまでの間のスタッフのお給料 2,100,000円