干潟さん:
フードバンクさがは、「これまで自分が経験してきたことを地域に役立てたい」という思いから生まれました。環境問題や子どもの支援といった分野に携わってきた経験を持つ中で、「フードバンク」という言葉に出会ったことが、活動の出発点となりました。ある大学の公開講座で、フードバンクかごしまの方の講演を聞く機会があり、国内にも実際にフードバンクの活動を行っている人がいることを知りました。そして、「佐賀にはまだこのような活動がない。ぜひ佐賀でも始めたい」という想いが強くなりました。
その想いに共感した仲間が少しずつ集まり、当初は3人ほどの小さなチームで活動を開始しました。福岡や久留米のフードバンクにもボランティアとして参加しながら、現場での経験を積み、フードバンクの仕組みや運営について学びました。そうした学びとネットワークの広がりの中で、「佐賀でもフードバンクを立ち上げたい」という思いをさまざまな場所で発信し、共感してくださる方々と出会いながら、「フードバンクさが」を設立するに至りました。
干潟さん:
フードバンクさがでは、「食で人と人をつなぐ」という理念を大切にしています。食べるということは、すごく大事なことだと思っています。同時に人の心をつなぐ力があると私たちは考えています。活動の中では、単に食品を届けるだけでなく、「食への感謝の気持ち」や「作ってくれた人への思いやり」を大切にすることを心がけています。食品ロスという社会課題に向き合う中でも、食べ物を粗末にせず、大切に扱うという食育の視点を忘れずに取り組んでいます。
また、子どもの約9人に1人が貧困状態にあると言われる現代において、子どもたちが孤立しないよう、地域の中で多くの大人たちが関わり、見守ることが重要だと考えています。誰かとつながっているという安心感が、子どもや家庭の支えになります。私たちは、食をきっかけに人と人とのつながりを広げることで、あたたかい社会が築けるのではないか、と考えています。
Q. これまでの活動内容について教えてください(川田)
干潟さん:
フードバンクさがでは、これまでにさまざまな取り組みを行ってきました。その一つが「お米プロジェクト」です。立ち上げて間もない頃から始めた事業で、ひとり親家庭を対象に、毎月5キロのお米を約50世帯に届けることからスタートしました。活動が広がるにつれて多くの寄付をいただけるようになり、年間を通じてお米を提供できるようになりましたが、今年度は入手が難しく、一時的に休止しています。お米の高騰により生活が一層厳しくなる中、この支援の大切さを強く感じています。
もう一つ、長く続けている取り組みに「クリスマスケーキを贈るプロジェクト(サンタプロジェクト)」があります。こちらは約5年前から行っているもので、支援者の方々がサンタクロースという形で、ひとり親家庭にクリスマスケーキをお届けしようという趣旨で始まりました。ひとり親家庭では、季節の行事やイベントを経験出来ないことが多いため、子供達に少しでも楽しい思い出を作ってほしい、家族で食卓を囲んで温かい時間を過ごしてほしいという願いを込めて取り組んでいます。プロジェクトを通じて、子どもたちから「サンタさんありがとう」「来年もお願いします」といったメッセージや、イラスト付きのお便りがたくさん届きます。その声をいただく度に、私たちも温かい気持ちになり、この活動を続けてきてよかったと心から思える、大切な取り組みです。
Q. 今回のプロジェクトでの具体的な活動について教えてください(川田)
干潟さん:
通常、私たちフードバンクでは、合意書を交わした提供団体を通じて、その先にいる支援対象の方々へ食品を届ける仕組みをとっています。子ども食堂など、地域のさまざまな団体を通じた支援が中心ですが、一方で、「声を上げられない人たち」にどのように届けるかという課題意識も常に持ち続けています。
そうした中で、数年前からスクールソーシャルワーカーの先生方と連携し、夏休みなどの長期休みに合わせて、子どもたちへの食支援プロジェクトを実施しています。今年は特に、地域の福祉団体や行政とのつながりも深めながら、より包括的な支援体制の構築を目指して取り組んでいます。
また今年は、企業や市民の皆さまからいただいた食品の寄付を「つなぐ」ことを大切にしながら、支援を展開しています。夏休み前には、「子どもたちのために」とフードドライブを実施してくださった団体や企業も多く、非常に心強い支えとなりました。さらに、電子レンジで温められるご飯パック(1ケース40食入り)をご提供いただき、1世帯につき1ケースずつ配布できることになりました。合計で約500ケースを受け取り、今回のプロジェクトでは480世帯への支援を予定しています。
Q. これから新たに始めたい事業や活動方針について教えてください(川田)
干潟さん:
新たにやりたいことは本当にたくさんあるのですが、今は新たなプロジェクトを積極的に立ち上げていくというよりも、団体としての基盤をしっかり整えていくことに力を入れています。年々、企業からの寄付が増え、提供先となる団体も広がる中で、私たちが受け取った食品を県内で有効に循環させられていることは、とてもありがたいと感じています。
一方で、大切な食品をお預かりしている立場として、企業や地域から「信頼される団体」であることの重要性を、ここ数年とても強く感じています。寄付というかたちで支えてくださる企業に対して、食品の管理や在庫の確認などをきちんと行い、責任を持って対応できる体制づくりが必要だと考えています。
今後は、さらに多くの食品を扱い、佐賀県内のより多くのご家庭に支援を届けられるようになることを目指しつつ、まずは団体としてのガバナンスや運営体制を強化し、より信頼される団体として着実に歩んでいきたいと思っています。

インタビュー時の様子(インターン生 川田と事務局スタッフ 吉田)
インタビューを終えての感想(インターン生 川田より)
フードバンクさが様のお話を伺い、「食を通じて人と人をつなぐ」という理念が、活動の根底に強く流れていることを実感しました。単に食品を届けるだけではなく、そこに「感謝の気持ち」や「孤立させない社会をつくる」という温かな想いが込められていること。そして、お米プロジェクトやクリスマスケーキプロジェクトのように、子どもたちや家庭に笑顔や安心を届ける活動が、地域の大きな支えになっていることが印象的でした。
また、今後については新しい事業を始めるよりも、団体としての基盤を強化し、寄付してくださる企業や地域の方々に対して責任を果たしていきたいという姿勢に、信頼感を感じました。食品の管理やガバナンスなど、見えにくい部分を大切にされているからこそ、多くの方からの寄付や協力につながっているのだと思いました。
インタビューを通して、食の支援が単なる「モノのやり取り」ではなく、人と人とを結びつけ、地域に温かなつながりを育む活動であることを学びました。
特定非営利活動法人フードバンクさが様の取り組み
フードバンクさが様は、佐賀県佐賀市を拠点に「食への感謝の気持ちを大切にし、食によって人と人がつながる社会づくり」を目指して活動しているNPO法人です。企業や市民から寄付された食品を子ども食堂や福祉団体などを通じて届けるだけでなく、ソーシャルワーカーや行政とも連携し、声を上げづらいご家庭にも支援が届くよう活動を広げています。食を通じて人と人とがつながる、あたたかい社会づくりを目指しています。
特定非営利活動法人フードバンクさが様活動の詳細はこちら

