TRIO JAPANとはTransplant(移植) Recipients(受領者) International(国際) Organization(組織) の頭文字を取って並べたものです。
アメリカに留学経験のある一人の医師と、アメリカで脳死肝移植を受けた一人の移植患者が、アメリカの臓器移植者の自助団体であるTRIOの活動を知り、日本でもこうした団体があればと、今からちょうど30年前の1991年に発足させたのがTRIO JAPANです。
最初の臓器移植法(1997年)が施行された6年前になります。私たちの願いは移植医療が普通の医療として日本社会に受け入れられることです。
日本国内で臓器移植でしか救われない患者さんは約15000人います。一年間で移植を受けられる人は約400人と2〜3%の人しか移植を受けることができません。
翻って日本と同じような制度を採用している国の100万人あたりの臓器提供者数を比べるとアメリカでは33.32人、イギリスで23.35人、お隣の韓国でも8.66人となっています。
ところが日本は0.77人とその数は圧倒的に少なく、このような状況が何十年も続いています。
日本国内の臓器提供者(ドナー)が圧倒的に少ないため、海外へ助けを求める日本人患者が後を絶たないのが実情です。
しかし、海外渡航移植は患者への過度の肉体的な危険が伴います。また、資金調達のための募金活動は心無い罵詈雑言を浴びせられ、家族への社会的な危険も伴います。本来なら海外渡航移植は避けられるなら避けたほうが良い選択肢です。
2008年のイスタンブール宣言以降、移植医療の自給自足が世界の共通認識です。そんな中、アメリカだけが正式に受け入れてくれています。アメリカのご厚意にすがり、長年助けを求めているのが現状です。
国際移植学会では 2008年4月30日から 5月2日にかけて、トルコのイスタンブールで、 "International Summit on Organ Trafficking and Organ Tourism" を開催しました。 世界 78ヶ国、154名のメンバーが参加し、3日間の協議の末に「イスタンブール宣言」を取りまとめるに至りました。
以下などが理由として挙げられます。
・社会通念となりえない” 脳死”
”人の死”とは呼吸停止(呼吸の※不可逆的停止)、心停止(心臓の※不可逆的停止)、瞳孔散大という3つの徴候をもって”人の死”としてきたのがこれまでの社会通念でした。ところが、1960年以降、人工呼吸器が普及し始め、1970年代からは「脳死」という状態がみられるようになりました。「脳死は人の死なのか?」と医師の中でも認識が広まっていない状況でした。そんな中、1968年に日本で初めて和田医師により心臓移植が行われました。(通称「和田移植」)この「和田移植」に対して、臓器提供者(ドナー)と臓器受領者(レシピエント)の妥当性をはじめ、さまざまな疑義が呈せられ、和田医師は刑事告発されてしまいました。結局は不起訴になりましたが、それ以降、「脳死」については法律家や社会学者、倫理学者などによる発言が中心で、医師はむしろ発言を控える状況になり、医療科学が置いてきぼりになってしまいました。このような歴史的背景から日本では脳死に対する議論が進みませんでした。
※不可逆的:元の状態に戻れないこと
・理解しにくい法律の建付と家族への負担
多くの国では脳死判定は医療者が主導で行い、臓器提供をする・しないの最終判断は本人の意思を尊重した家族の決定であり、本人の意思が確認できない場合でも家族が最終的に決定します。しかし、日本の現行の法律では「脳死」は臓器提供を前提とした場合にだけ、法的脳死判定が行われ”人の死”として認められています。つまり、臨床的脳死だけでは”人の死”として認められていません。また、法的脳死判定を行う際に家族の同意が必須となっています。この判断を家族がしなければいけないことが、相当の重圧を家族に押し付ける格好になっています。
・提供病院、受入病院の体制の不備
2019年の日本救急医学会の臓器移植に対応できる医療施設への意識調査では、回答した施設の約41%が患者の家族に臓器提供の「選択肢を提示していない」と答えました。その背景には臓器提供時の病院施設の負担感があります。特に救命から法的脳死判定、臓器提供までを担う救急医、集中治療医、脳神経外科医といった医師の負担が過重です。患者の家族に臓器提供の選択肢を示すことが治療からの手のひら返しのようだと抵抗を覚え、ためらう医師は少なくありません。また、法律自体は縛りが少ないものの、法に付随したガイドラインや厚労省の通達などでがんじがらめとなり、提供施設や現場の医師の足かせになっているのが実情です。
・潜在的ドナーの発掘のための制度・体制の乏しさ
臓器提供の意思表示方法の一つに運転免許証の裏面への記載があります。日本の場合、運転免許更新の際に講師の方が臓器提供の意思表示に触れる時間は極めて少ないです。翻ってアメリカでは運転免許更新の際に臓器提供の意思表示を促す声かけを所管職員が積極的に行っています。また、脳死となりうる急患が病院に運ばれた際には病院施設や警察、行政など関係機関が連携してその患者の意思を汲み取る仕組みを構築しています。アメリカ社会においても「あげる」「あげない」「もらう」「もらわない」の4つの権利が等しく尊重され、臓器移植に対しては日本と同じような考えの社会です。人口は日本の約2.75倍ですが、臓器提供者数は日本の100倍以上です。このように日本では運転免許証1つを例に上げても潜在的ドナー発掘のための努力は乏しいと言えます。
・” 約一割に留まる ”意思表示の少なさ
内閣府による世論調査によると約4割が臓器提供を承諾すると回答しています。しかし、臓器提供の意思表示をしている割合は約1割となっており、臓器移植への関心が少ないことが伺えます。
日本国内において移植医療を取り巻く環境が厳しい状況でも、日本での移植が叶うことを信じ、国内待機を選択をされる方もたくさんおられます。
しかし、移植に到達できず亡くなられている方も少なくないのが現実です。国内待機を決断したことへの後悔や葛藤を抱き続ける人たちを見るのは胸がしめつけられる思いになります。
私たちトリオ・ジャパンは様々な活動を通じて移植医療が普通の医療として日本社会に受け入れられるように活動をしてきました。そしてこの度、これからの私たちの活動を応援してくれる仲間をより募るべく、ファンドレイジングを行うことにしました。
・啓発活動
シンポジウムの開催や講演活動の他、書籍の出版やメディアへの露出、関連機関への協賛・協力を通じて移植医療が広く社会に定着するよう活動して参ります。
・海外渡航移植を決断した患者さん・ご家族・その周りの人への支援
やむなく渡航移植をせざるを得ない患者及びご家族、そしてそのご家族を応援する人たちに、これまでの経験に基づき親身になってアドバイスをさせていただいております。
・移植待機中/移植後 の当事者・ご家族・きょうだいを支える活動
臓器移植を待ち続けている間は、孤独と恐怖や不安にさいなまれます。また、移植を受けた後であっても様々な問題に直面します。移植者自身やその家族が直面する様々な問題について、お互いに支え合う活動をしてまいります。同時に、移植が叶わなかった・予後が悪く亡くなってしまったなど、そのようなご家族を支える活動も行って参ります。
・政策提言
1997年の臓器移植法、2010年の改正臓器移植法の際には国会議員への働きかけを積極的に行ってきました。それ以降、かなりの年月が過ぎましたが、我が国の移植医療を取り巻く環境は依然厳しい状況が続いています。潜在的ドナー発掘のための様々な国への提言を再開していきたいと考えています。
・メディア機関との連携
日本の移植医療の背景には多くの社会的問題を抱えています。しかし、最近では臓器移植に関することを話題として取り上げてもらうことが大変困難になってきております。もはや臓器移植にはニュース性がないのかもしれません。広く社会に知らしめるためにはメディアの力は重要です。少しでも話題にしてもらえるように、様々なメディアと連携し、最新の情報提供をしていきます。
爆笑問題―太田光さん
トリオジャパンのみなさんの活動が続いていると思うと、どれだけの命が救われたかと思うとただただ頭が下がる。ご自分の体も大切にして頑張ってください
VIDEO
トリオ・ジャパンではこれまで30年以上、移植医療が広く社会に定着することを願い、活動してまいりました。しかし、設立から30年が経った現在においても移植医療が抱える課題は数多く存在します。トリオ・ジャパンが社会的ハブとして、これまで以上に多くの仲間を巻き込み、社会を変えていくべく新たな試みにも挑戦していきます。
そのためには、皆様のお力が必要です。いただいたご寄付は以下の使途に大切に使わせていただきます。あたたかいご支援をよろしくお願い申し上げます。