公益財団法人山階鳥類研究所

アホウドリ ~絶滅危惧種から外れる未来を目指して~

翼を広げると2メートルを超える⼤型の海⿃ アホウドリ。オキノタユウ(沖の太夫)、オキノジョウ(沖の尉)、トウクロウなどとも呼ばれ、その優雅な姿は太古の昔から人々を魅了してきました。かつては数百万羽がいたとされていますが、羽毛布団の材料として乱獲され、1949年の調査では「絶滅した可能性が高い」と報告されました。しかし1951年に伊豆諸島鳥島で約10羽が再発見されてから、関係者のたゆまぬ保全活動によって、2023年現在7,900羽以上にまで回復。絶滅危惧種(Ⅱ類)からの脱却まであと⼀歩のところまできています。アホウドリ復活のための最後の挑戦に、あなたの⼒を貸してください。

山階鳥類研究所とは?

山階鳥類研究所では、現在とくに、絶滅危惧種のアホウドリやヤンバルクイナなど、希少種の保護に役立つ研究を行っています。また、足環などによって、渡り鳥の渡りの経路や、野鳥の寿命を知ることのできる「鳥類標識調査」(バンディング)や鳥インフルエンザに関わる調査も環境省の委託で行っています。山階鳥研が誇る鳥類学に関する図書や鳥類標本は、鳥類の研究に欠かせない基礎資料であり、なかには地球上からいなくなってしまった絶滅鳥の標本や19世紀の博物学書などの貴重なものもあります。
今日、環境問題が人類の大きなテーマです。生物多様性の保全は21世紀に生きる私達の、次世代に対する責務です。鳥が棲めない地球に人間は住めません。私どもの活動は環境破壊や鳥類の絶滅を止めることにつながっています。

絶滅危惧種 アホウドリを救え!

絶滅危惧種という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
その名の通り、自然環境の劣化などで絶滅が危ぶまれる種のことで、環境省などによって指定されています。

大海原を悠々と飛ぶ、翼を広げると2メートル以上にもなる海⿃、アホウドリも絶滅危惧種のひとつです。かつては数百万羽がいたとされていますが、羽毛布団の材料として乱獲され、1949年の調査では「絶滅した可能性が高い」と報告されました。
しかし1951年に気象観測所職員により鳥島で再発見され、約10羽が生き残っていることがわかりました。そこから気象観測所職員、東邦大学 長谷川博名誉教授や山階鳥類研究所をはじめとする研究者の保全活動により、2023年現在7,900羽以上にまで回復。絶滅危惧種からの脱却まであと⼀歩のところまで来ています。アホウドリ復活のための最後の挑戦に、あなたの⼒を貸してください。

写真:今野怜

これまでのアホウドリ保全活動について

● 鳥島 -安定した個体群の確立へ―
山階鳥類研究所では1991年から本格的に保全活動に加わりました。従来の繁殖コロニーがあった燕崎は、急峻な崖の下にあることから、卵やヒナが転げ落ちてしまったり、土砂で埋まってしまったりと繁殖成功率が安定しませんでした。そこで、土台を安定させるための工事や砂の流れを変えるための排水路を作る工事を実施し、燕崎コロニーの繁殖成功率の向上を果たしました。さらに、島の反対側に位置し、傾斜が緩やかな初寝崎に安全なコロニーをつくるため、実物大のデコイ(模型)と音声でアホウドリを誘引する「デコイ作戦」が1992年から実施されました。当初、繁殖つがい数はなかなか増加せず、10年間ほぼ1羽のヒナしか生まれませんでしたが、2004年に初めて4羽が誕生してからは毎年増え、最近では、燕崎コロニーよりも多い500羽以上のヒナが確認されるまでになりました。2023年現在、鳥島では推定7,900羽が生息しています。

● 聟島 -第三の繁殖地復活を目指して―
鳥島での個体数増加をうけ、保全プロジェクトは新たな段階に進みました。鳥島は活火山の島で、大規模な噴火の可能性が常にあります。そのため、鳥島以外で噴火の危険がない島に繁殖地を作ることがアホウドリの保全のためには急務でした。
そこで、かつてアホウドリが繁殖していた小笠原諸島の聟島が選ばれ、2008年から2012年まで、鳥島で生まれたヒナを移送して人工飼育する「ヒナ移送プロジェクト」が行われました。このプロジェクトでは合計70羽が聟島で人工飼育され、現在はそこで巣立った個体やその子孫が継続して繁殖しています。2023年現在、約10羽が飛来し、近年1-2羽のヒナが誕生しています。

活動内容の詳細

2035年までに… 世界でも類をみない復活の奇跡を目指して

アホウドリが絶滅危惧種から外れるためには、鳥島での増加傾向の維持に加え、聟島が安定した繁殖コロニーに成長することが必須条件です※。聟島では50つがい以上が繁殖することを最終目標としていますが、安定した繁殖地が確立する一つの中間目標として、2035年に以下の状態になることを目指しています。

「聟島で3年間にわたり、10つがい以上が繁殖」

現在、聟島で繁殖しているのは1〜2つがい。これまで聟島で巣立った若鳥(2016 〜2023年の間に9羽が巣立ち)が、今後戻ってきて繁殖を開始することが見込まれますが、そのためにはデコイと音声を用いた誘引を継続することが必要です(2007〜2021年まで実施、2022、2023年は中断)。

⿃島初寝崎コロニーでデコイと音声で誘引し、新たな繁殖コロニーを創出した実績から、誘引を続けることでアホウドリが誘致できること、複数のつがいが繁殖し始めると個体数の増加速度が上がることがわかっています。また、鳥島で自然発生した繁殖地(子持山コロニー)でも、つがい数が増えた12年目から飛躍的に数が増加しています。新たな繁殖地が確立するまでには、いずれの場所でも10年以上がかかりました。

写真:今野怜

鳥島の例をならえば、聟島でも多くのつがいが繁殖するようになると、アホウドリ同士が呼び合い、コロニーに集まるようになるため、デコイと音声による誘引は終了できます。10つがい以上が安定して繁殖し、聟島が自立した繁殖コロニーとなるまで、誘引を継続することが重要です。

⼀度は絶滅したと思われたアホウドリが完全復活する 。このようなケースは世界的にも少なく、⽇本のアホウドリ保全活動が成功することは、世界中の絶滅危惧種の保護に取り組む⼈にとっても、⼤きな希望となります。

※ 絶滅危惧種から外れるための条件(準絶滅危惧種へのダウンリストの条件)
① 繁殖するペア数合計750以上
② 少なくとも3つのコロニー(島)で3年間の平均増加率が7年間以上にわたり6%以上である
③ 少なくとも2つのコロニーは鳥島以外にあり、最低50ペア以上の繁殖が各コロニーで見られる

プロジェクトリーダー メッセージ

●鳥島プロジェクトリーダー(富田直樹研究員)
海洋生態系の頂点に位置するアホウドリは、地球の環境を映す鏡です。アホウドリを守ることは、人間を含む多くの生き物が暮らす環境を守ることにつながります。絶海の孤島に生き残り、人々の力で回復しつつあるアホウドリをこれからも保護していくため、毎年毎年のモニタリングを欠かすことはできません。島を埋め尽くすアホウドリを再び蘇らせ、彼らが暮らす海と空を次の世代にいっしょに残しましょう!!

●聟島プロジェクトリーダー(油田照秋研究員)
2000年代のはじめ頃「アホウドリの繁殖地を増やそう」とアホウドリ保全チームが始動した時からこれまで、国内外の研究者、行政関係者、協力調査員、ボランティア、研究機関、自治体、一般企業など多くの人、団体が、聟島のアホウドリ繁殖地復活を目指して努力し、情熱を注いできました。その結果聟島は、アホウドリが全くいない状態から毎年10羽ほどが飛来し、ヒナも誕生する「繁殖地の卵」になりました。この卵が、孵化して成長し、力強く羽ばたいて巣立っていくまで…、聟島がたくさんのアホウドリの繁殖地として確立するまで、私たちは保全活動やモニタリングを継続していきたいと思います。これからもご支援をよろしくお願いします。

寄付金の使い道について

これまで国や都などの公的機関による事業が核となり、保全活動が展開されてきました。しかし個体数の増加に伴い予算が縮⼩しています。アホウドリの完全復活に向けて、あと一押し。
山階鳥類研究所では、鳥島で年1回、聟島で年3回の調査と保全活動を実施することを目標としています。これらの活動を行うには、毎年1,200万円の予算が必要となります。

■ 鳥島での調査(1年に1回:約600万円)
鳥島でモニタリング調査(飛来数・ヒナ数・つがい関係確認・足環装着)、生態調査を行います。
内訳:八丈島への旅費、準備期間の宿泊等(約50万円)
   八丈島から鳥島への往復渡船代(約200万円)
   衛星通信料(約100万円)
   1か月分の食糧、生活備品(約50万円)
   調査用具・備品・旅費・人件費等(約200万円)

■ 聟島での調査(年3回:約600万円)
聟島では、アホウドリコロニー形成のための誘引装置の設置、撤去を含め、年3回の調査が必要となります。
  1回目 誘引装置の設置
  2回目 モニタリング(飛来数・ヒナ数・つがい関係確認・足環装着)
  3回目 誘引装置の撤収
内訳:小笠原諸島父島への旅費・準備期間の宿泊等(約150万円)
   父島から聟島への往復渡船代(約150万円)
   調査中の食糧、生活備品(約50万円)
   誘引装置のメンテナンス・修理・保管等(約50万円)
   調査用具・備品・旅費・人件費等(約200万円)

ご寄付を頂きました皆様には、アホウドリ調査の様子を紹介したニュースレターを定期的にお届けします。

写真:今野怜

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