こんにちは。パルシックレバノン事務所の土橋です。皆さまからの温かいご支援により、目標としていた70万円を年内に達成することができました。心より感謝申し上げます。
1月、2月の一番寒い時期にアマン校に暖房用の灯油を確実に届けられることにはなりましたが、アマン校のあるバールエリアス市の冬は長く、3月の終わりまで暖房が必要な時期が続きます。3月も子どもたちが暖かい教室で学べるように、私たちはセカンドゴールを設定しました。引き続き応援いただけるとありがたいです。
今回は、レバノンで私たちが力を入れて行ってきた教育支援活動の背景と子どもたちについてお伝えしたいと思います。
パルシックは2017年からレバノンで教育支援活動を開始し、2020年から2025年9月まで、5年間にわたりレバノン北東部にあるアルサール市でシリア難民の子どもたちへの教育支援活動を行ってきました。


2011年にシリアで内戦が始まってから、アルサールには多くのシリア難民が戦禍を逃れるために避難し、一時は人口の半数近くがシリア難民だったと言われています。レバノンの中でも”忘れられた地”と言われるアルサールは、もともと経済的に取り残された地域として知られています。2019年の経済危機以降、シリア難民とレバノン人の困窮世帯の多くが貧困ラインかそれ以下での生活を強いられています。そのため多くの家庭にとって、子どもを学校に通わせる余裕がない現実があります。
パルシックは、そのような厳しい状況の中でも、子どもたちがなんとか学習機会を得られるよう、現地の学校と協力して、シリア難民の子どもたちが学べる時間を設定し*、家計への負担を減らすために通学と教材をサポートしてきました。また、子どもたちが学校を離れた後も、レバノンやシリアの別の学校で学び続けられるように公式のカリキュラムを採用して、編入に必要な修了証を発行してきました。
*レバノンの学校では、レバノン政府の方針によりレバノン人生徒のクラスとは別にシリア人生徒のための通称”セカンドシフト”を設置し授業を行う必要があります。

冬が厳しいことでも知られるアルサールの難民キャンプで暮らす家族にとっては、暖房に必要な燃料を確保するのも容易なことではありません。暖房のきいた学校に行けることは、子どもたちにとって楽しみであり、また寒い冬の間も勉強を続けるモチベーションにもなっていました。

シリアでは、昨年2024年12月にアサド独裁政権が崩壊し内戦が終結しました。その後、暫定政権が成立し、大きな転換期を迎えています。アルサールのシリア難民の多くもシリアに帰還を始め、パルシックが活動をしていた学校の多くの子どもたちも今ではシリアに戻っています。


その一方で、約14年間に及んだ内戦でシリアは荒廃状態にあり、市民生活を送るのに必要な基本的サービスやインフラがいまだに十分に機能していないのが現状です。政治転換から1年経った今現在も、市民生活が目に見える形でよくなっているというわけではありません。
いまだに多くのシリア難民の人びとが滞在している地域もレバノンにはあり、越冬支援を行うバールエリアス市周辺には40以上の難民キャンプで暮らしている人びとと学齢期の子どもたちがいます。今回の越冬支援では、そのような子どもたちが歴史的転換期の大きな渦の中にあっても、安心して将来のために学習を続けられるよう、支援活動を行います。

