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これから始まる休眠預金とは?~資金分配団体・実行団体が知っておきたい基礎知識~

これから始まる休眠預金とは?~資金分配団体・実行団体が知っておきたい基礎知識~

認定ファンドレイザーの今給黎(いまきゅうれい)です。日本ファンドレイジング協会の研修講師や、様々なNPOのファンドレイジング計画作成の支援、支援者管理システム構築のお手伝いなどをしているフリーランスのファンドレイザーです。定期的にファンドレイジングに役立つ知識をコラムでお届けしております。

今回は休眠預金を扱っていきます。金融機関の口座に預けられたまま10年以上取引されていない休眠預金は毎年700億円といわれています。その預金を社会課題の解決に活用する仕組みが動き出しており、今年度は30億円が助成される見込みです。現在、個人寄付が年間7,756億円、法人寄付が年間7,909億円の日本の寄付市場において、初年度は30億円と限定的ですが、今後500億円くらいまで助成額が高まっていくことが想定される休眠預金は大きなインパクトがあります。また、そうした休眠預金を原資とした助成金をうけて活動したいと考えている実行団体や、そうした実行団体に助成・貸し付け・出資したい公益財団法人などの資金分配団体を目指している団体がおさえておきたいポイントについてまとめていきます。

 

▽目次

1.休眠預金のスキーム

2.助成開始までのスケジュール

3.どんな実行団体に助成することを想定しているのか

4.休眠預金の助成方針

5.その他注意事項

さいごに

 

1.休眠預金のスキーム

寄付者が、特定のNPO法人や公益財団法人等に寄付をする場合は、寄付先を明確に選択をしていますが、休眠預金はそうした性質ではありません。金融機関にお金を預けている多くの人達から発生するいわば国民の資産といえます。そうした資金の性質から、高い透明性や説明責任、成果の可視化が求められるため、時間をかけてスキーム(下図)がつくられてきました。この仕組みでは、3つのプレーヤーが存在します。

①指定活用団体
国で唯一の①指定活用団体(赤枠)が方針や基準、各種ルール作りをしたり、年間30団体程の資金分配団体を公募・審査・選定します。
②資金分配団体
指定活用団体から資金を受けて、実行団体に助成していきます。指定活用団体が策定した方針や基準、ルールに沿った資金分配をしていきます。
③実行団体
社会課題を解決するために活動している団体で、資金分配団体から資金の助成をうけます。

指定活動団体に一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が2019年1月に決まりました。応募4団体から選定された理由は「経済界、労働界、行政、ソーシャルセクターの枠を超えてオープンな受け皿となる。最も中立的で徹底した公益性が敷かれている運営体制を評価した(内閣府嶋田裕光審議官)」です。それぞれの団体が提出したプレゼン資料や議事録なども公開されていますので、関心がある方はコチラで確認できます。

指定活動団体に応募した4団体とその特徴
・一般財団法人日本民間公益活動連携機構(指定活用団体として決定)
経団連を母体としたNPO色の低い団体、民間企業のCSRとの協働を期待され「産官学連携によるオールジャパンでの取り組み」の視点が他財団よりも優れていた。

・一般社団法人社会変革推進機構
日本財団職員などが立ち上げた組織。これまでの日本財団の活動を通じた実績のあるNPO支援をアピールし説得力があったが、理事の報酬案が過大等があった。

・一般財団法人みらい財団
認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎氏、楽天三木谷氏等の各界の著名人を集めた組織構成で、審査委員の総合評価が一番高かったが、業務の実施体制や中立性等の理由で選定されなかった。

・一般財団法人民都大阪休眠預金等活用団体
学術研究会の委員が多く、知の構造化をアピールした内容。評議員の構成の偏りや、代表理事のマネジメントの実績等の懸念がされていた。

 

2.助成開始までのスケジュール

休眠預金は、各金融機関から発生した休眠預金が、国に唯一の指定活用団体に交付され、それを約30程の複数存在する資金分配団体(民間財団など)に助成し、それを原資に資金分配団体がNPO法人などの実行団体に助成をする仕組みです。今年初めて運用されるもので、スケジュールは以下発表されています。

<休眠預金が実行団体に助成されるまでのスケジュール>

2019年
 6月~7月末:資金分配団体の公募期間

 9月:資金分配団体の決定

 10月~12月:実行団体の公募

 12月~翌年2月末:実行団体の選定

2020年
 1月~3月末:実行団体への助成


最初に資金分配団体が決まり、その後実行団体に助成プログラムとして公募が始まる順番です。

下図の赤枠にあるように資金分配団体と実行団体は公募で決まっていきますので、休眠預金の仕組みが目指している団体像を理解することがとても重要となります。

3.どんな実行団体に助成することを想定しているのか

休眠預金のお金は広く国民から集められたものなので、明確なねらいがあり、それにそって助成されます。どんな実行団体が助成対象となるのかをしっかりと理解することが重要です。内閣府の資料から重要な部分を見ていきましょう。

・国や自治体の補助をうけていると休眠預金はうけることができない

休眠預金は、「国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題の解決を図ることを目的として民間の団体が行う公益に資する活動」に助成されますので、既に国や自治体が補助をしている団体や事業は対象外となります。ですので、国や自治体から補助金をもらっている事業型のNPOの場合は確認が必要です。


・3年間でファンドレイジング体制を高める必要がある

「民間公益活動の自立した担い手の育成及び民間公益活動に係る資金を調達することができる環境の整備を促進する。」とあります。休眠預金の助成は最長3年間の助成となります。これまで助成金・補助金漬けの団体を多く出してしまった反省から、休眠預金に依存しないようにすることを強く意識された制度設計となっています。助成終了の3年後に自主的に事業が実施できる予定がたてられるかどうかが申請の際に問われます。また、資金分配団体は実行団体に対して、資金支援だけでなく「伴走型の非資金的支援」をする必要があり、プログラム・オフィサーを配置しサポートを実行団体に提供します。


・事業評価をおこない、定期的に報告をおこなう

休眠預金を受ける実行団体は、事業成果の可視化として事業評価を実施し、6か月に1回報告をする必要があります。実行団体はプログラム・オフィサーのサポートをうけつつ、事業成果を指標化をし、その達成状況を定期的に進捗報告することが求められます。2019年7月19日JANPIAより資⾦分配団体・実行団体に向けての「評価指針」の発表がありました。基本的には自己評価をしていくことになりますが、国民的に関心度が高い事業については外部評価・第三者評価されることになります。団体内に評価するノウハウやスキルがない場合は、JANPIAもしくは資金分配団体より専門家の伴走支援をうけることができます。

評価するタイミングは、①事前評価、②中間評価、③事後評価、④追跡評価(必要に応じて)の4つで、全体像は下図の通りとなります。

<JANPIA発行:資金分配団体・実行団体に向けての評価指針P7より抜粋>

申請する団体は、事前に助成対象の事業が本当に社会的なニーズがあるのかの調査や、事業が活動からアウトプット・アウトカムに論理的につながっているかをロジックモデルで記載し、アウトカムを評価するための基準を申請書に盛り込む必要があります。そして、事業が始まってから定義した基準に沿ってアウトプットやアウトカムの評価をしていき、必要に応じて事業終了後に受益者の変化が本当にあったのかを事後評価としてみていきます。
 

4.休眠預金の助成方針

ではどのように助成されるのか方針をみてみましょう。JANPIAの2019年度事業計画・収支予算のポイントの資料をもとに、コメントを追加しています。


・事業費の20%以上は自己資金または民間からの資金を確保

休眠預金の依存体質にならないように、自己資金比率が20%となります。「ただし、財務状況や緊急性のある場合などで、希望する団体には特例的に、その理由の明示を求め、自己負担率を減じることとする。また、複数年度の事業においては、助成終了後の事業継続を見据えて事業の最終年度には補助率を原則に戻すこととする」とありますので、1年目、2年目は理由があれば比率を低くすることができますが、3年目には20%にする必要があります。自己資金の20%を他の助成金でとればいいのでは?と思うかもしれませんが、財団の立場として、休眠預金の補填として自財団の助成がつかわれることを歓迎する財団は少ないというみかたもあります。


・最長3年間の複数年度の助成で概算払い(前払い)

後払いだと資金力があるか、融資をうけられる団体しかうけられませんので、概算払いはありがたいです。ただ、当初の目標を達成できなかった場合や、返金しないといけない場合など様々なことが発生すると思います。


・助成額の最大15%は管理費(家賃や人件費など)に充当可能

これは管理費比率15%で事業を回すことをあらわします。スタッフの最適な役割分担と関与度の管理やICTによる効率化等、きちんと管理していないと20%~30%になってしまいます。この15%の数字からもきちんと運営体制がとれている団体を想定していることがわかります。


・評価等に係る調査関連経費として、助成額の5%を計上可能

社会的インパクト評価を実施するには伴走支援者が必要となったり、調査が必要となりますので、その費用を助成金から出すことが可能となっています。事業評価に関して助言や調査、ワークショップをしてくれる人材はまだまだ少ないですので、そうしたことを担ってくれる人材の育成や、外部委託できる人を探すことが今できることかもしれません。


・4領域の助成プログラム

休眠預金では以下4つの領域の助成プログラムが提供されます。


①草の根活動支援事業
:全国各地で地域に根差して従来から事業を展開しているNPOや各種団体を念頭に、本制度を活用し、さらなる活動の拡大及び成果の向上を図り、当該活動の持続可能性の向上につなげていくことを目指す。1団体あたりの助成上限2,000万円
※一般的に草の根活動というと年間30万円~50万円くらいの資金規模の活動を指すことが多いですが、休眠預金でいう草の根活動は範囲が広いので注意


②新規企画支援事業
:斬新で革新的な手法による社会の諸課題解決への取り組みを促進するため、企業等の他セクターと連携した新規企画の創出(インキュベーション)と実行の加速(アクセラレーション)を目指す。1団体あたりの助成上限6,000万円


③ソーシャルビジネス形成支援事業
:革新的事業による社会の諸課題解決への取り組みを促進するため、新たなビジネスモデルの創出と推進を目指す(ソーシャル・インパクトボンド手法など)。1団体あたりの助成上限6,000万円


④災害支援事業
:大規模な自然災害等により、地域とその住民が長期にわたり困難を強いられることから、被害軽減に向けたNPO等による防災・減災の取り組みや、大規模災害発生後の緊急災害支援、さらには災害復旧・生活再建支援等に向けたNPO等の各種団体の活動の推進を図る。1団体あたりの助成上限4,000万円

 

5.その他注意事項

休眠預金の仕組みは資金源が国民の資金であることから、ガバナンス・コンプライアンスがとても重要視されています。規定類が整っているか、法律にそった組織運営ができているか、利益相反がないかなど、休眠預金の助成に申請予定の団体は必ず事前にチェックしておきましょう。

・第三者の組織評価をしておく

非営利組織の評価には組織評価と事業評価があります。休眠預金では事業評価が注目されていますが、前提として組織がきちんと運営されているかもみられます。第三者評価として組織評価をして自団体のガバナンス体制を見える化しておくことも準備となります。

組織評価の一例として非営利組織評価センターをご紹介します。

非営利組織評価センターでは「グッドガバナンス認証」を行っております。これは、「ベーシック評価」として基礎的な組織状態の23項目、「アドバンス評価」としてマネジメント力や業務遂行能力などの27項目を評価し、認証される仕組みです。もし、いきなり認証をとれなくても、3年の期間を通じて改善して認証を取るという計画をたてれば、「自立」することを計画に盛り込むことができます。

・利益相反がないか確認する

資金分配団体は、当該団体と密接な関係があるとみられる組織、団体等については原則、実行団体に選定しないとなっています。ですので、実行団体として助成金申請をする時に、団体の理事・監事・評議員が資金分配団体などの関係者ではないかを確認する必要があります。例えば、Aさんが代表理事を務めるある地域のコミュニティ財団が資金分配団体に選定されたが、Aさんはその県内の様々なNPOの理事に就任しているケースなどです。こうした地域は多いと思いますので要注意です。

 

さいごに

これまでにわかってきた休眠預金の内容を見ると、「休眠預金の助成金は金額が大きい」「最大3年で資金調達できるようにならないといけない」「社会的インパクト評価の仕組みが必要」の3つのことがわかります。これらからわかることは、休眠預金は国民から託されたお金の「投資」であり、受ける団体はその投資を活かして活動することで、事業では「社会的インパクト」を生み出し、組織を「成長」させ、資金調達力をつけて「自立」することが求められるということです。

これらのことから、休眠預金の助成をうけることはどの団体でもできることではありません。事業のみで精いっぱいで組織成長や資金調達まで気が回らない・・・という団体さんは、たとえ休眠預金の助成金をうけられたとしてもその後が大変です。逆に、社会問題を根本解決するためには事業・組織・財源と成長させていかなくてはいけないと思っている団体さんには休眠預金は適した資金です。これまで非営利の世界には「投資」という概念が定着していませんでしたが、投資で得た資金を元手に短期間に事業を拡大させる選択肢が増えたと考えるのがよいのではないでしょうか。

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